消費増税先送りで「3年後」はどうなる

【株価】暴落で中国企業に狙われる“第2、第3のシャープ”

鴻海の郭会長(左)と高橋社長
鴻海の郭会長(左)と高橋社長/(C)日刊ゲンダイ

 増税先送り会見の翌2日、東京市場の平均株価は前日終値から400円近く急落して引けた。この日以降、1万7000円の壁を越えられない状態が続いている。

 本来、増税先送りは消費を刺激するため、企業にとってプラスの効果が見込まれるはずだ。株価だって上向いて当然である。それが逆の動きになっているのは、国の借金が野放図に拡大することへの不信感が大きいのだという。

 経済評論家の斎藤満氏が言う。

「増税先送りはマッチを擦るようなもの。一時的に暖を取れたとしても、長くは続きません。しかも今回は、秋以降の補正予算編成とセットになった先送り。寒さはどんどん増していく。経済成長によって税収がどれだけ増えるかを示す税収弾性値は、現在せいぜい2ぐらいです。つまりGDP1%成長で増える税収は2%程度。日本のGDPは500兆円で税収がざっと50兆円だから、仮に補正で5兆円の税金を投じてGDPを1%押し上げても、増える税収1兆円。差し引き4兆円はどこかに消えてしまう。これを繰り返せば、国庫は空っぽです」

 最近は、「ヘリコプターマネー」まで語られだした。ヘリの上から大量の紙幣をばらまくように、日本中をカネでじゃぶじゃぶにしようという発想である。

「財源は国債で、これまで以上にじゃんじゃん発行し、日銀に引き取らせるわけです。現在も、金融機関から購入する形で、毎月8兆~12兆円の買い入れが実施されています。ヘリコプターマネーでは、それを歯止めなしでやる。いずれ日本国債は格下げされ、暴落です。国債は日本の格付けの最上位となるもの。その信頼が失われれば、日本企業の株価も無傷ではいられません。トヨタやホンダなど、日本を代表する企業が大ダメージを受けます」(斎藤氏)

 平均株価の2万円回復なんて望めない。1万円割れも現実味を帯びてくる。そんな状況を待ち望んでいるのがチャイナマネーだ。大手証券会社のM&A担当者が言う。

「シャープを買収した鴻海のように、日本企業の技術やブランドを狙っている中国系企業は多いのです。すでに買収のチャンスをうかがっているケースも少なくない。彼らにとって日本株の暴落は渡りに船です。家電製品や不動産の次は、株価が暴落した大手企業が爆買いされることになるでしょう」

 さすがに時価総額が20兆円近いトヨタは株価が半額になっても手を出しにくいだろう。だが、中国人が爆買いする便器のTOTOは時価総額が7000億円、炊飯器の象印マホービンは1500億円だ。

 安倍首相は中国の脅威を理由に集団的自衛権の行使容認に踏み切ったが、自らの手で中国の台頭を許すのだから皮肉なものである。