小林麻央さん約2年継続 乳がん抗がん剤治療を詳しく知る

乳がんが明らかになった小林麻央さん
乳がんが明らかになった小林麻央さん(C)日刊ゲンダイ

 フリーアナウンサーで市川海老蔵夫人の小林麻央(33)が、乳がんで入院していることが明らかになった。1年8カ月前から、手術を受けるために抗がん剤治療を継続しているというが、乳がんの抗がん剤治療とはどのようなものなのか。

 乳がん治療の基本は、手術で腫瘍を取り除くことだ。しかし、「ステージⅣ」(他の臓器に遠隔転移している)まで進行している場合は、手術適応から外れ、延命効果を得るためにホルモン治療や抗がん剤を使う化学療法が行われる。

「ステージⅢb」(しこりが胸壁と強く癒着していたり、皮膚表面に進出して皮膚の崩れがみられる。炎症性乳がんも含まれる)や、「ステージⅢc」(わきの下のリンパ節と胸骨の内側のリンパ節の両方に転移している。あるいは鎖骨周辺のリンパ節に転移している)まで進んでいて、手術ができない場合も、まずは化学療法が行われるケースが多い。

 板橋中央総合病院乳腺外科の上野貴史医師は言う。

「乳がん治療に使われる抗がん剤には、吐き気、脱毛、白血球の減少などの副作用があります。ステージⅣで、差し迫った生命への危機がない場合には、副作用が軽く患者さんの負担が少ないホルモン療法を選択することが多い。ステージⅣの場合、根治は困難なため、治療の目的が緩和、延命となるからです。ただし、女性ホルモンに対する受容体がないタイプはホルモン療法が効かないため、最初から抗がん剤による治療が行われます」

 ステージⅢで術前に治療する場合は、ホルモン剤よりも抗がん剤治療の方が奏功率が高く、そちらが選択されるという。

「ステージⅢの場合、抗がん剤の効果でがんが縮小し、手術が可能になるケースも多くあります。根治が望めるため、副作用があっても効果の高い抗がん剤が優先されるのです」

■縮小して手術可能になるケースも

 乳がん治療に使われる抗がん剤は、「アンスラサイクリン系」と「タキサン系」の2種類が主体だ。抗がん剤治療は、手術を受ける前にがんを小さくする目的などで術前にも行われているが、術後の再発予防、再発が見つかって治療する場合に行われるケースが多い。いずれの場合も、基本的に使われる抗がん剤は同じだという。

「再発予防で使う場合は、有効性が証明された投与法と投与量に基づいてきっちり行うことが肝心で、アンスラサイクリン系とタキサン系の両方を用いるケースが多い。再発してから使用する場合は、副作用に応じて量や頻度を加減することもあります。日本で開発されたエリブリンや、経口薬を用いるケースもあります」

 細胞の表面に「HER2タンパク」発現のあるタイプの乳がん(全体の2割程度)は、分子標的剤「抗HER2薬」を抗がん剤と併用することで、治療効果が大幅に高まることがわかっている。そのため、再発予防として分子標的薬のハーセプチンを1年間投与するのが標準だ。再発が見つかって治療する場合でも、抗HER2治療薬を抗がん剤と併用する。ただし、患者のがん細胞にHER2タンパクがある場合でなければ効果はない。

「また、再発治療の場合には、投与した抗がん剤が効いていても、時間が経つと必ず効かなくなってきます。その段階で違う種類の抗がん剤に変更しますが、それで効果がみられても、やはり時間が経つと効かなくなります。4~5回変更して効果がみられなくなると、その後は抗がん剤の効果が得られる可能性が低くなるため、緩和ケアに移行するケースが多い」

「進行乳がん」という場合、2つの意味がある。それが「進行再発乳がん」なら通常はステージⅣであることを意味し、治癒は望めない。一方、早期乳がんに対して「進行乳がん」という場合はステージⅢも含まれ、根治も可能だ。麻央の乳がんがステージⅢだとすれば、抗がん剤が効いてがんが縮小し、早い段階で手術できるようになることが期待される。

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