看護師直伝 がん治療と笑顔で付き合う

がんとともに生きる 「仕事継続」が治療の支えになる

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 昨年10~12月、厚労省の研究班が国立がん研究センターなど3つのがん専門病院で、がんと診断された時に就労していた患者を対象に調査を行いました。

 その結果によると、がんと診断されて仕事を辞めたのは約2割。そのうち「診断確定時」「診断から最初の治療まで」と、治療開始前の早期に退職を決めた人は4割に上りました。理由としては、「職場に迷惑をかける」「両立の自信なし」だったそうです。

 あなたはがんになったら、今就いている仕事をどうしますか?

 先日参加した「北海道乳がん看護研究会」で、乳がん治療医が興味深い発言をされました。「仕事を辞めて治療に専念する人よりも、仕事を続けながら治療を頑張っている人の方が、副作用が少ないように感じる」というのです。

 職を失えば、経済的な不安が生じるとともに、社会に生きる人間としての立ち位置を失うことにもつながります。まさに「病は気から」。少しでも自分が必要とされていると感じられる環境が、その人をその人らしくさせ、治療を続ける力になる。私も患者さんの姿を通して痛感しています。

 たしかに、かつては病気退職が当たり前でした。しかし今は、手術が短期入院で可能となり、外来化学療法の普及で通院しながら抗がん剤の治療を受けられます。つまり、仕事を辞めずに治療が受けられる環境が整ってきているのです。

 もちろん、がんがマイナスの要素になり、部署異動や仕事内容の変更を強いられて、結局は自主退職へ追い込まれるような場合もあるでしょう。たとえ職場に理解があっても、自分のやりたいことができないこともあります。

 また、がんになると、多かれ少なかれこれまでの日常が変化します。「自立性」が脅かされるだけでなく、社会や家庭で築いてきた関係性にも変化が起こってきます。

 しかし、2人に1人ががんになる時代。自分ががんと闘わなければならなくなった時に仕事と治療を両立できるよう、健康なうちから職場の制度を整えたり、雰囲気を変えたりしていくことはできると思います。

「がんになったから仕事を辞める」という時代は終わりつつある。ぜひ、みなさんにもそう考えてほしい。治療を継続しながら、あるいはいったん治療を終え、がんとともに生きる“サバイバー”も増えています。