140でも要注意 悪玉コレステロールの数値リスクと治療法

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 LDL(悪玉)コレステロールが180mg/dl以上なら、すぐに病院へ行かなくてはならない――。こう言うのは昭和大学医学部糖尿病・代謝・内分泌内科学部門の平野勉教授だ。

 LDLコレステロールは「140以上」が高コレステロール血症で、健診などで判明すると再検査を言い渡される。

 しかし極端な話、①心筋梗塞や狭心症を一度も起こしたことがない②糖尿病をはじめ生活習慣病がひとつもない③喫煙習慣や肥満がない④中性脂肪が基準値以内──のすべてに該当するなら、140を超えたくらいでは、さほど深刻な状況ではない。

「食生活の改善などで、数値は基準値内に下がるかもしれません」

 しかし「爆弾を抱えているような危機的状況」なのが、LDLコレステロール180以上。心筋梗塞、狭心症の冠動脈(心臓の動脈)疾患の発症リスクが極めて高い。冒頭の①~④や年齢にもよるが、食事や運動で数値は下がりづらく、それらによる改善を待っている段階でもない。

「180以上の中には遺伝子の異常による家族性高コレステロール血症も含まれていて、この場合、心筋梗塞の確率が13倍に跳ね上がります」

 コレステロールは、その恐ろしさが正しく認識されていない。コレステロールが高いと血液がドロドロになり、動脈硬化につながるとの“常識”が浸透しているが、大間違いだ。

 コレステロールは無色透明で、血液中を流れている時はまったくの無害。ドロドロともサラサラとも関係しない。

 細胞膜の構成に必要なコレステロールを細胞に運ぶ役割を担っているのがLDLだ。ところが遺伝や体質などでLDLの血液中の量が過剰になると、血管壁に入り込み蓄積される。

「特に冠動脈にLDLが蓄積されやすく、蓄積されると医療用ドリルで壊さなければならないほどカチカチの塊になります。それを粥状動脈硬化症といい、心筋梗塞、狭心症につながる。LDLの害はこれに尽きます」

 LDLコレステロールが180以上の場合、心筋梗塞、狭心症から逃れるには高コレステロール血症薬「スタチン」の投薬治療しかない。スタチンには「レギュラー」「ストロング」の2種類の強さがあり、ストロングが必要な患者もいる。

■LDLの小型化で粥状動脈硬化のリスク増

 LDLコレステロールが「140以上180未満」なら、中性脂肪との関係に注目。

「LDLは球形で、直径が大きいものと小さいものとに分けられます。直径が小さいLDLは『スモールデンスLDL』と呼ばれ、直径が大きいものに比べ血管壁に入り込みやすい」

 つまり、粥状動脈硬化症のリスクが高くなる。では、小型化に何が関係しているかといえば、中性脂肪なのだ。

「中性脂肪が血液中に多いと、LDLを小型化するのです。LDLコレステロールが180までいかない、例えば140~150でも中性脂肪が高ければ、薬物治療が必要と判断されることがあります」

 整理すると、①LDLが血管壁に入り込み蓄積されると心筋梗塞、狭心症のリスクを上げる。②LDLコレステロールが180以上であれば薬物治療が必要。③LDLコレステロールが140をやや超えている程度でも、中性脂肪が高ければスモールデンスLDLで心筋梗塞、狭心症のリスクが高く薬物治療が必要な場合もある――。

 心筋梗塞、脳卒中など冠動脈疾患の専門医たちは「高コレステロール血症は、薬の副作用にとらわれず治療すべき」と言う人が多い。それほど深刻なのだ。

▽LDLとは
 脂質とタンパク質が結合したものが「リン脂質」。比重の違いからいくつかの種類に分けられ、「LDL(低比重リボタンパク)」はそのひとつ。血液中のコレステロールの3分の2以上がLDLに含まれていて、LDLコレステロールと呼ばれる。

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