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【顔面けいれん・三叉神経痛】厚生中央病院・脳神経外科(東京都目黒区)

厚生中央病院・脳神経外科の田草川豊部長
厚生中央病院・脳神経外科の田草川豊部長(提供写真)

 顔の片側が自分の意思とは関係なく、ピクピク動いてひきつれる「顔面けいれん」。顔の一部(おでこ、ほお、顎)に発作性の激痛が走る「三叉神経痛」。それぞれの脳神経に血管(動脈)が当たって起こる病気だ。

 これらの治療には、保存的治療(対症療法)と外科治療があるが、同科は手術に偏重することなく、どちらの治療法にも柔軟に対応できる全国でも珍しい施設。同科の田草川豊部長(顔写真)は根治手術である「微小血管減圧術」のエキスパートとして知られるが、保存的治療にも精通する。

■手術に偏重しない柔軟性がモットー

「医師はすべての治療法のメリット・デメリットなどの客観的な情報を提供する立場で、治療を選ぶのは患者さん自身です。しかし、保存的治療はいずれ効きが悪くなっていくので、根治手術という選択肢があることは患者さんにとって心強いと思います」

 顔面けいれんの治療では、一般的にボツリヌス毒素を顔面の筋肉に注射するボトックス注射が広く行われている。同科の場合でも、常時150人以上の患者が受けているという。

「ボトックス注射のメリットは手術に比べて侵襲が少なく、すぐできることです。デメリットは有効期間が平均3カ月で、薬代が1回1万5000円(3割負担)と高いこと。それに、長期間続けているとマヒが残るケースがあることです」

 三叉神経痛で通常行われる治療の第1選択肢は内服治療。しかし、期間の経過とともに薬の効きが悪くなり、早い人で3~5年、最終的には4分の3は薬でコントロールできなくなるという。限界がきたら、神経ブロック(アルコール注入や熱凝固)という選択肢もあるが、結局、効かなくなれば繰り返すことになる。同科では、患者が神経ブロックを希望する場合は提携先のペインクリニック科で治療をしている。

■完治率90%以上の微小血管減圧術の第一人者が在籍

「三叉神経痛では、痛みで話せない、食事ができなくて1カ月で7キロもやせる人がいます。顔面けいれんでは、不自然な顔の動きのために仕事に支障が出たり、精神的な苦痛を伴います。患者さんが根治を望み、重い合併症がなければ手術を検討します」

 田草川部長は、個人で通算4400例以上の微小血管減圧術の経験数をもつ。国内で同手術を多く実施している脳外科医でも1000例に満たないので、断トツの実績だ。

 手術は、耳の後方の後頭部に500円玉くらいの穴を開け、神経に触れている血管を移動してしっかり固定する。これには非常に高度な技術が必要になるという。所要時間は3時間ほどだ。

「手術の効果は、三叉神経痛ではほとんどの人が翌日には治っています。顔面けいれんは早く治る人は全体の40%で、残りは症状が取れるまで3カ月から1年くらいかかります」

 再発のない完治率は顔面けいれんで98%、三叉神経痛では90%。再発しても症状は軽いので、大半はボトックス注射や薬でコントロールできるという。

データ
 全国土木建築国民健康保険組合が直営する総合病院。
◆スタッフ数=常勤医師4人
◆年間初診患者数=約1300人
◆微小血管減圧術の年間実施数=約80例(うち顔面けいれん6割、三叉神経痛4割)