「やっぱり漢方の方がいいですよね」とおっしゃる方がいます。しかし私は、西洋医学にも東洋医学(漢方)にもそれぞれの「強み」があり、使い分けをすべきと考えています。また、「漢方は副作用なし」と考えている方もいますが、漢方も「薬」ですから、使い方を間違えれば副作用が生じます。
ポピュラーな漢方「葛根湯」は、程度は軽いとはいえ、胃の不快感、嘔吐、吐き気、食欲不振などの副作用がありますので、消化器系が弱い人は注意して使わなくてはなりません。また、葛根湯をはじめ、さまざまな漢方に含まれている生薬の「甘草」を大量に服用すると、むくみや血圧上昇などの副作用があると指摘されています。
さらに、漢方の使い方であまり知られていないのは「表裏」の関係です。東洋医学では、内臓を五臓六腑(肝、心、脾、肺、腎=五臓/胆、小腸、胃、大腸、膀胱、三焦=六腑)に分け、不調の原因などを判断します。五臓と六腑は表裏の関係にあり、たとえば肺と大腸は密接につながっています。具体的には、「ぜいぜい呼吸が苦しい」「せき込む」といった肺の働きがうまくいっていない時に用いる漢方「麻杏甘石湯」は、痔にも使います。「肺の熱が大腸にいき、大腸の働きが悪くなって痔が生じた」と考えるためです。
漢方薬剤師にはよく知られた内容ですが、西洋医学だけを学んだ医師や薬剤師には知らない方も多いのです。抗がん剤治療は副作用が強いとよく言われますが、最近では漢方薬の効果に着目し、副作用軽減のために用いる医師も増えています。
漢方達人をめざせ!