天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

大動脈弁狭窄症が急速に増えている…高齢女性に多い疾患

順天堂大学の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 患者さんは高齢者がほとんどで、そのうちの13%程度が80歳以上になります。心臓の弁は、常に内外の両方から血流による圧力がかかるため、加齢とともに劣化しやすい部分です。今ほど高齢化が進んでいなかった時代は、弁が劣化する前に他の病気などによって亡くなる人が多かったと思われます。しかし、生活環境や栄養状態の改善、医療の進歩などによって高齢化が加速したことで、弁にトラブルが起こる人も増えたのです。これからも、大動脈弁狭窄症の患者さんは確実に増えていくでしょう。

 悪くなった大動脈弁を完全に治すには、患者さん自身の弁を修理する「弁形成術」か、弁を取り換える「弁置換術」が必要です。そうした外科手術の他に、近年はカテーテルを使って人工弁を留置する「TAVI」(経カテーテル大動脈弁留置術)が登場しました。外科手術のように人工心肺を使って心臓を止める必要もなく、体への負担が少ない画期的な治療法です。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。