どうなる! 日本の医療

医療費40兆円超え 今こそ“無駄な法律や通達”を見直すとき

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 医療費の膨張が止まらない。病気やケガの治療で全国の医療機関に支払われた1年間の医療費の総額は、2013年度に40兆円を超えた。7年連続の増加だ。

 国はその抑制のため四苦八苦だが、そんな中で注目されているのが生活保護世帯の医療費だ。現在、日本の生活保護受給者は約216万人で、受給世帯は約163万世帯(2016年1月現在)に上る。

 生活保護は、預貯金や持ち家などの資産や、働く能力などをすべて活用しても自力で生活できない人に対する国の支援。健康保険が適用される治療なら、その費用は全額税金で賄われる。

 問題は生活保護費総額3.8兆円の半分近くが医療費で占められていること。そもそも生活保護を受けている人は病気やケガで働けなくなったり、障害があるため仕事につけず、心ならずも受給している人が多い。そのため、医療費がかかるのはやむを得ないところがある。しかし、患者の懐が痛まないのをいいことに悪質な病院が長期入院の患者をたらい回しにしたり、不必要な手術をしたり、薬を出したりすることが頻繁に報告されている。

 最近は、外国人の生活保護受給も問題になっている。キッカケは2014年7月の最高裁判決。同第2小法廷は、生活保護法第1条及び第2条がその適用の対象を「国民」と定めているのを根拠に、「外国人は生活保護法に基づく保護の対象となるものではなく、同法に基づく受給権は有しない」とし、外国人が法的保護の対象となるのを否定する判断を示した。

 このため、外国人への生活保護は生活保護法に基づいてではなく、人道的な観点による行政措置であることがハッキリした。これを受けて厚労省からは、こんな声が上がっているという。

「たしかに戦後の混乱期の1950年、わが省の大先輩が『外国人の生活困窮者を放置することは人道的にも妥当ではない』との通達で一時的に救済したものがいまだに有効になっている。現在、生活に困窮している外国人になんらかの救済が必要だとしても、新しい制度を作るべき。その前にまず、過去の通達を改めることが必要ではないか」

 しかし、法務省関係者は別の問題点を指摘する。

「外国人の生活保護者が問題というより、日本人、外国人にかかわらず、働く気があれば働けるのに、脱法的に生活保護受給をしている人が相当数いる。そこが大問題です」

 あるルポライターはこう言う。

「中国では、『日本でタダで生活する方法』といった本が販売され、売れまくっているという。日本でいかに生活保護をうまく受給するかが事細かに解説されているそうです」

 国は医療費高騰を嘆く前に、無駄の多い法律や役所の通達をもう一度見直すべきだ。

村吉健

村吉健

地方紙新聞社記者を経てフリーに転身。取材を通じて永田町・霞が関に厚い人脈を築く。当初は主に政治分野の取材が多かったが歴代厚労相取材などを経て、医療分野にも造詣を深める。医療では個々の病気治療法や病院取材も数多く執筆しているが、それ以上に今の現代日本の医療制度問題や医療システム内の問題点などにも鋭く切り込む。現在、夕刊紙、週刊誌、月刊誌などで活躍中。