これで痛みを取り除く

「薬による頭痛」 月10日以上服用や起床時痛む人は要注意

急にやめると頭痛がひどくなる可能性も…
急にやめると頭痛がひどくなる可能性も…(C)日刊ゲンダイ

 薬は本来、症状を取るために使うものだが、薬が原因で頭痛が起こる場合がある。代表的なのが「薬物乱用頭痛」。その名称が違法薬物の乱用をイメージさせることから、日本頭痛学会では2年前に「薬剤の使用過多による頭痛(MOH)」と名称を変更した。慶応義塾大学病院神経内科の柴田護専任講師が言う。

「MOHは、頭痛治療薬を使い過ぎることで起こる頭痛です。『鎮痛薬を月に10日以上、3カ月以上飲んでいる』『朝起きたときから頭痛に悩まされる』場合にはMOHの疑いがあります」

 市販薬でも、病院の処方薬でも起こる可能性があるという。MOH患者数は頭痛患者の5~10%を占めると考えられている。ただし、MOHは「片頭痛」と「緊張型頭痛」の患者に起こる疾患で、原因となる鎮痛薬を関節リウマチ患者が大量に使用しても、頭痛が起こることはないという。

「なぜ鎮痛薬が頭痛の原因になるのかハッキリ分かっていませんが、頻用することで痛覚の感受性や調節機構に異常が生じて、元の頭痛がひどくなると考えられています。市販薬では、カフェインやアリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素を含む薬に起こりやすいことが分かっています」

 たとえば、「バファリン」「ノーシン」「セデス」「イブ」など、誰もがよく知る市販薬の多くが該当する。

 MOHは頭痛を抑える薬によって起こるため、精通する専門医でないと治療はなかなか難しい。まず、飲んでいる薬が頭痛を悪化させていることを患者に十分認識してもらうことが大切になるという。

 治療の柱は、①原因薬剤の中止②薬剤中止後の反跳頭痛(=リバウンドの頭痛)に対する治療③頭痛の予防薬投与の3本だ。

「原因薬剤の中止は即時断薬が原則とされますが、急にやめると頭痛が強くなって仕事などに支障が出ることも多い。そのような場合は、生活スタイルや状況に応じて徐々に薬を減らしていきます。薬剤中止後の反跳頭痛に対しては、原因薬剤が市販薬や非ステロイド性抗炎症薬なら、片頭痛の特効薬であるトリプタンを頓服します。トリプタンが原因薬剤であれば、非ステロイド性抗炎症薬を使います」

 そして、普段飲む頭痛予防薬には、カルシウム拮抗薬や抗てんかん薬などを使う。これらの治療を原因薬剤中止後に3カ月くらい続けていれば、大半は治るという。

 しかし、これで解決というわけではない。MOHは再発が多いからだ。

「再発率は半年後で31%、1年後で41%と、最初の1年間での再発が多い。それ以降は再発のリスクが減るので、1年間は専門医による患者さんへの教育やモニタリングなどのフォローアップが重要になります」

 頭痛の中には、持病の常用薬の副作用によって起こるケースもある。医療現場でよく問題になるのは血管拡張作用のある脳梗塞の予防薬。この場合も薬剤の変更が必要になるという。