医療数字のカラクリ

超高額な新薬「オプジーボ」の値段はどう決められたか?

「ニボルマブ」(商品名オプジーボ)のすさまじい高薬価について紹介しましたが、これはいったいどのように決められたのでしょうか。

 ニボルマブは、もともと手術不能な悪性黒色腫という皮膚のがんに対する薬として、平成26年に保険適用が認められました。悪性黒色腫は日本人には比較的珍しいがんで、当初の年間使用患者は500人と推定されていました。

 その少数の患者を対象にした治療として、何万人にも使われるという状況を想定せずに決定された薬価です。ただ、そうはいっても年間500人に3000万円の治療で計150億円がかかるというわけで、これでも大した金額です。

 それでは、この当初の薬価がどのように決められたのか見てみましょう。平成26年の薬価収載時の資料によれば、ニボルマブ100ミリグラムでは、「製品総原価45万9778円、営業利益17万55円、流通経費4万5953円、消費税5万4063円」となっており、製品総原価、つまり研究開発費や薬そのものを作る費用が突出して高いことが分かります。

 肺がん患者に対して保険が認められた今、対象患者は年間数万人にも上ります。使用される患者数を2万人としても、1人当たり3000万円かかるとすれば、薬剤費用だけでも全体で年間6000億円という巨大な額になります。この高薬価が継続される可能性は低く、来年4月の薬価改定で引き下げられるのは間違いないでしょう。ここで一体どの程度の引き下げが行われるのか、注目していきたいと思います。

名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。