ABO血液型との関係が指摘されているがんは、これまで取り上げた膵臓がんと胃がん以外にもあります。ただし、いずれも研究対象となった人数が少ないため、必ずしも信頼性が高いとはいえません。その点をお断りしたうえで、いくつかご紹介しましょう。
まずは肺がんです。肺がんは大きく「小細胞がん」と「非小細胞がん」に分かれますが、後者において血液型と予後が関係しているかもしれません。これは日本の研究グループが明らかにしたものです。患者333人の血液型と5年生存率を比較したところ、全生存率(治療を受けた患者のうち、生存しているものの割合)で「О型83.0%、A型67.2%、B型68.8%、AB型69.2%」という違いが出たというのです。つまり、О型の患者は、非О型の患者よりも5年生存率が15%前後も高いということになります。
皮膚がんについては、中国で行われた研究があります。悪性黒色腫の患者482人の血液型を調べて統計処理したところ、「A型がО型よりも1.6倍近く発症率が高い」という結果になりました。しかし、イタリアで患者445人を対象に行われた同様の研究では、まったく違う結果が出ています。悪性黒色腫になりやすいのは「О型でRhマイナスの人」だというのです。
口腔がんは、血液型との関係がかなり前から指摘されていました。とくにインドなど南アジアでは噛みたばこの習慣があるため、口腔がんが多いことで有名です。インドの研究グループが行った最近の研究では、「A型は非A型よりも約1.2倍、前がん症状を起こしやすい」ことが示されました。別の研究でもA型のリスクが報告されているので、ある程度の信憑性はありそうです。
最近、なにかと注目されている乳がんですが、こちらは血液型との関係は低そうです。過去の論文の数字を統計学的に再評価した研究が最近発表されました。それによれば「A型の白人が非A型の白人よりもリスクが若干高い」という結果になっています。しかし、東洋人では血液型による違いはなさそうです。
前立腺がんについては、最新の研究でA、B、О型のリスクはほとんど違いませんが、「AB型で1.25倍」という数字が出ています。
永田宏
長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授
筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。