先ほどお話しした男性患者さんに使用したホモグラフトは、術後11年ほどで傷みが酷くなり、次にロス手術を行いました。大動脈弁を肺動脈弁と交換し、取り除いた肺動脈弁には、新たなホモグラフトを使いました。
その2度目の手術から14年後の今年、再び大動脈弁の傷みが進んだため3回目の手術が必要になり、今度は通常に使用されるウシの心膜でつくられた生体弁に交換しました。25年間で3回の手術を行ったことになります。
■「TAVI」の登場で若年者でも生体弁を使うように
もし、この男性患者さんの最初の手術をいま行うとしたら、ホモグラフトではなく生体弁を使うでしょう。かつては、若年者に生体弁を使うと石灰化が早く進む欠点がありました。35歳以下なら早い人で10年以内、35歳以上は15~20年ほどで劣化してきます。そうなったら、再び弁を交換しなければなりません。しかし近年は、石灰化を抑制すると考えられるコレステロール低下剤「スタチン」を使うことで劣化の速度を遅くできるようになりました。
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