天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

「ロス手術」は将来的に再手術が必要になることもある

順天堂大学の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 それでも、さらに数年後には再手術が必要になりますが、いまは「TAVI」(経カテーテル大動脈弁留置術)という血管内治療によって新たな生体弁を留置する方法が登場し、患者さんが若くても生体弁を勧めるケースが増えました。再び開胸して手術する負担をかけず、新しい生体弁に交換することが可能になってきているのです。

 25年前にいまの治療法があれば、先ほどの男性患者さんは、今ごろTAVIで弁の交換をしているかどうかという段階なはずです。

 余談ですが、ハリウッド俳優のアーノルド・シュワルツェネッガー(68)は、1997年に大動脈閉鎖不全症で弁置換術を受けています。当初はロス手術が行われる予定でしたが、うまくいかなかったため術中に変更され、生体弁が使われました。こちらも、弁の交換が必要になったときはTAVIが行われるかもしれません。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。