これで痛みを取り除く

「がんの痛み」 医療法麻薬は内臓痛に対して劇的に効く

鎮痛補助薬を組み合わせて早期に使う
鎮痛補助薬を組み合わせて早期に使う(C)日刊ゲンダイ

 がんによる体の痛みは病期に関係ない。末期がんでなくても生じる可能性がある。そのため痛みがあれば、がん治療の初期からでも痛みを取る「緩和ケア」が並行して行われる。

 がんの痛みには、どのような種類があるのか。東邦大学医療センター大森病院・緩和ケアセンターの大津秀一センター長(緩和医療専門医)が言う。

「痛みの性質による分類では、『内臓痛』『体性痛』『神経障害性疼痛』とあり、痛みを取る治療もそれぞれ特徴が異なります」

 内臓痛は、がんによって内臓が傷害されて生じる。胃や大腸などの消化管や肝臓・膵臓などからの痛みだ。胃や大腸などは内圧の上昇、肝臓や腎臓などの固形臓器は被膜の急激な伸展などが痛みの引き金になる。体性痛は骨転移痛が代表的だ。他にも関節、筋肉などが傷害されても生じる。

「内臓痛は、胸や腹部が『絞られる』『押される』などと表現される鈍痛が多く、痛い場所が曖昧です。一方、体性痛は痛い場所が明確で、主に体を動かしたときに痛みが強くなるのが特徴です」

 神経障害性疼痛は、がんが直接、神経を圧迫したり、浸潤して生じる痛み。しびれ感を伴う痛み、ピリピリと電気が走るような痛み方をして、知覚異常や運動障害を伴う場合が多い。

 痛みを取る緩和ケアで、よく使われるのがモルヒネに代表される医療用麻薬(オピオイド)だ。神経にあるオピオイド受容体に作用して痛みをやわらげる効果がある。かつては「中毒になる」「寿命を縮める」などと言われたが、そんなことはない。がんの痛みに対するオピオイドを含めた薬の選択はWHOによって指針が出されており、より安全で効果的な治療が行われている。ただし、オピオイドはどんな痛みにも効く万能薬ではない。

「オピオイドが劇的に効くのは内臓痛で、体性痛や神経障害性疼痛に対しては必ずしもそうではありません。特に神経障害性疼痛はオピオイドを使っても難治性で、鎮痛補助薬との組み合わせが大切になります」

 どの痛みに対しても基本的には、非オピオイド鎮痛薬やオピオイドといった鎮痛薬をベースに使う。その上で体性痛には、体を動かしたときの突出痛には即効性のある鎮痛薬(レスキュー薬)をうまく使いこなすことが重要だ。神経障害性疼痛では鎮痛補助薬として抗うつ薬などを併用するという。うつを治して効くのではなく、痛みをやわらげる神経を活性化して作用する。

「オピオイド一辺倒ではなく、いまは数多くの鎮痛補助薬があるので痛みの性質に合わせて除痛できます。がんの痛みは治療に影響するので、どんな痛みでも我慢せず、早い時点から緩和ケアを利用する。それが賢いがん治療なのです」