薬に頼らないこころの健康法Q&A

「震災ボランティア」は日本再発見のまたとない好機

井原裕教授(独協医科大学越谷病院こころの診療科)(C)日刊ゲンダイ

 4月に発生した熊本地震から2カ月以上経過しました。被災地支援活動はゴールデンウイークがピークでしたが、ボランティアたちの波もすでに過ぎ、被災地はセカンドステージに入ったといえるでしょう。

 ボランティアの方々の多くは、「熊本」「阿蘇」「湯布院」といったビッグネームは知っていても、「益城町」や「西原村」といった地名は、初めて知ったことでしょう。震災当時のテレビの画面にはがけ崩れの悲惨さが何度も映し出されましたが、その背景には緑の稜線と穏やかな谷が連綿とつらなり、震災前はさぞや美しい土地であっただろうと思わされます。ついでに益城町について調べてみた人もいたことでしょう。実際にかの地に赴いてみて、支援のさなかにも、この九州山地の一地域について多くを知ったに違いありません。熊本・大分について親しみが湧いてきたころです。ここでボランティア行を一時的な被災地ツーリズムに終わらせることはもったいない。今回の経験でできた縁を皮切りに、今後も長く被災地に関わってはどうでしょう。今度はボランティアでなくてもいい。純然たる観光旅行でもいいのです。

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井原裕

井原裕

東北大学医学部卒。自治医科大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学大学院博士号取得。順天堂大学医学部准教授を経て、08年より現職。専門は精神療法学、精神病理学、司法精神医学など。「生活習慣病としてのうつ病」「思春期の精神科面接ライブ こころの診療室から」「うつの8割に薬は無意味」など著書多数。