薬に頼らないこころの健康法Q&A

「震災ボランティア」は日本再発見のまたとない好機

井原裕教授(独協医科大学越谷病院こころの診療科)(C)日刊ゲンダイ

 私自身はといえば、東日本大震災後に始めた被災地医療支援をいまだに続けています。震災の年に地元の医師会の事業として独立行政法人国立病院機構花巻病院に派遣され、それを引き継ぐかたちで、独協医科大学越谷病院から被災地医療支援として派遣されています。長くかかわることで岩手への愛着も湧いてきました。私が医師人生を終えるまでに、東北に「もはや震災後ではない」といえる時代が訪れることはないでしょう。できるだけ長く、可能なら生涯にわたって、東北への医療のお手伝いを続けたいと思っています。

 東日本大震災であれ、熊本地震であれ、普段メディアに出ることのない地域が甚大な被害を受けました。しかし、報道は震災の事実を超えた深い意味を私たちにもたらします。「日本は広い」という誰もが忘れていた自明の事実です。こんな海沿いの町にも、あんな山深いところにも、人々が住み、生活を営んでいたのです! そして、そこには悲しみもあれば、喜びもあり、歴史もあれば、文化もある。震災ボランティアとは、実は日本再発見の機会でもあるのかもしれません。

 さて、1年半にわたって続けてきた本紙連載も、今回をもって終了とさせていただきます。読者の皆さまのおかげで、こころの健康にかかわる多くのことを考える機会をいただきました。ありがとうございました。

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井原裕

井原裕

東北大学医学部卒。自治医科大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学大学院博士号取得。順天堂大学医学部准教授を経て、08年より現職。専門は精神療法学、精神病理学、司法精神医学など。「生活習慣病としてのうつ病」「思春期の精神科面接ライブ こころの診療室から」「うつの8割に薬は無意味」など著書多数。