■腹部へ薬を直接注入
藤井准教授がもうひとつ挙げる「膵がん治療の最前線」は、「腹膜播種」に対する治療だ。
腹膜播種は、膵がんが転移し、お腹の中に星のように散らばっている状態で、打つ手がないとされてきた。
藤井准教授らが試みているのは、卵巣がんや胃がんの手術で行われている治療法で、リザーバーというポート(差し入れ口)をお腹に埋め込み、それを通して抗がん剤を直接注入する。
用いる抗がん剤は「パクリタキセル」で、週1回投与。臨床研究段階だが、このパクリタキセルの直接投与を受けた33人の腹膜播種の患者のうち、4分の1に該当する8人のがんが縮小し、手術が可能になった。がんがあることを示す腫瘍マーカーが正常化に至った。
パクリタキセルの膵がんへの投与は保険適用ではないので、現在国内でこの治療を行っているのは、名古屋大と関西医科大などに限られている。