急増中! 大人の「食物アレルギー」を甘く見てはいけない

病院でぜひアレルギー検査を
病院でぜひアレルギー検査を(C)日刊ゲンダイ

 食物アレルギーというと、子供の頃に発症するものだと思われがちだが、近年、大人になってから食物アレルギーになる人が増えているという。成人アレルギー研究の第一人者である国立病院機構相模原病院の福冨友馬医師(診断・治療薬開発研究室長)に詳しい話を聞いた。

 なぜ、成人の食物アレルギーが増えているのか。福冨医師は「アレルギーは文明病」だと指摘する。

「農村などで伝統的な生活をしていると、家畜の菌や毒素が常に身近にいるものですが、都市部では抗菌志向が強くなり、菌に接する機会が減少します。そのため、アレルギーを発症しやすくなるのです。これを『衛生仮説』といいます。最近では食べ物やシャンプーにも防腐剤が含まれているので、それが体内に残留して抗生物質を飲み続けているような状態が続くため、腸内の常在菌叢のバランスが崩れ、アレルギーを発症しやすくなっている可能性が指摘されています」

 高脂肪食、肥満、ビタミンD不足も、発症に関係しているという。現代的な生活習慣の変化が複雑に絡み合って、成人アレルギーを増やしているのだ。

 では、成人の食物アレルギーとは具体的にどんなものなのか。食物アレルギーには、「経口感作」と「腸管外感作」という2種類の発症ルートがある。経口感作は、口から食物を摂取してアレルギーを起こす場合。腸管外感作は、鼻や気道、皮膚から食物が体内に侵入してアレルギーを起こすケースをいう。

■放置すると重症化の恐れも

 成人の食物アレルギーは、とくに腸管外感作による発症頻度が高いという。食物が皮膚に直接付着したり、料理をしている際に室内に舞った食物のタンパク質などが皮膚、鼻、喉から吸収されて起こる。

「人間の体は、異物が侵入してくるとそれを攻撃するために、リンパ球による『IgE抗体』を作ります。これとアレルゲンが反応して、アレルギーのさまざまな症状を引き起こします。食べ物も人間にとっては基本的には異物です。それを排除しようとするのはしかるべき反応なのですが、口から摂取する食べ物には『免疫寛容』という特定の抗原に対する免疫抑制システムが働くため、反応を起こさずに済んでいます。しかし、繰り返し特定の食べ物を摂取し続けると、そのアレルゲンに対してのIgE抗体が蓄積され、経口感作でアレルギーを発症することがあり、皮膚や鼻などの免疫器官から食物が侵入すると、異物とみなして発症してしまうケースもあります」

 こうした成人アレルギーの原因物質でもっとも多いのが、リンゴや桃などの果物や野菜だ。これは「花粉食物アレルギー症候群」といって、花粉症の原因となるアレルゲンが、リンゴや桃にも含まれていることで起こる。とくに、ハンノキやシラカンバのアレルゲンに反応する人が発症しやすい。

 花粉食物アレルギー症候群の治療は、原因となる物質を除去すること。しかし、花粉の侵入は防ぐことが難しいため、根治は簡単ではないという。食べてアレルギーを起こした果物や野菜を避けるしかない。

 小麦や甲殻類は、食べ過ぎると経口感作でアレルギーを発症する場合がある。アレルゲン物質を検査で特定し、その食物を避けるようにしなければ、悪くなっていく場合もあるという。

「アレルギーの症状は、じんましん、かゆみ、下痢、咳などですが、腹痛や息苦しさ、だるさを感じることもあります。ひどい場合はアナフィラキシーショックによって血圧低下や意識障害を引き起こすケースもあり、甘く見てはいけません」

 これまで口にしても問題なかった食物が原因でアレルギーが起こっても、「まさか」と思って放置して、重症化しないとも限らない。まずは大人になってから突然、発症する食物アレルギーがあることを頭に入れ、異変や不安を感じたら、すぐに病院でアレルギー検査を受けたほうがいい。

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