当事者たちが明かす「医療のウラ側」

「いつもの薬をいつもの量…」に警鐘 長期処方の危険性

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ
40代薬剤師

 不景気のせいか、1カ月分を超える薬を出す「長期処方」が増えています。糖尿病の薬や睡眠薬、高血圧の薬など、99日処方をして平気な顔をしている医師がいます。怖いな、と思います。

 ご存じの方もおられるでしょうが、薬の必要量は夏と冬では違います。

 例えば血圧は一般的に冬に上がり、夏は下がります。そのため、夏は薬を少なめに、冬は多めに調整します。もちろん、その間に患者さんの食事の内容や量、体重や精神状態などが変わると血圧は変化します。当然、医師は細かく血圧をチェックして、その結果に応じて薬の種類や量を変化させなければなりません。

 ところが、長期処方の患者さんは、「いつもの薬をいつもの量だけ出されている」ケースがほとんど。恐らく、長期処方を出す医師は、患者さんの体重の増減、食事、季節の変化などを何も見ずに、病院で測った血圧の結果だけで「ああ、変化ありませんね。ではいつものお薬を出しましょう」などと言っているのだろうと思います。

 また、先輩医師から受け継いだ患者に対しては「先輩の処方を変えるのは失礼だ」と考えて、薬の種類も量もまったく変えない若手医師も多い。これでは、薬が効きすぎてしまいます。

 とくに気をつけなければならないのは75歳以上の高齢者です。人間は年を取れば取るほど腎機能が低下します。その分、薬の代謝・排泄が悪くなり、薬が長時間体内にとどまって若い人より薬が効きやすいのです。にもかかわらず、薬の量を減らすべき夏に普通通りに飲んでいたら、効きすぎて副作用が出るのは当然です。

 複数の薬を飲んでいる人は、薬同士が互いに反応してより強く副作用が出ることが知られています。東大病院老年病科に入院している患者を調べたところ、薬1種類で表れる副作用は5%ほどですが、6種類以上の薬を飲んでいる人は15%にアップすることが報告されています。

 患者さんは何でも医師任せにせず、「ずっと同じ薬で良いのでしょうか?」「ダイエットで体重を落としたのですが……」「汗をかく夏でも量を変えずに大丈夫ですか?」などと聞いてみることも大切です。

 自分の体は自分で守る。そのことを忘れてはいけません。