集中力と免疫力アップ 「呼吸器筋」は2つの運動で鍛える

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 健康というと運動や食事ばかりが注目されるが、空気を吸ったり吐いたりする力を忘れてはいけない。

 成人の1日の空気摂取量は約20キログラム。肺から取り込まれた空気は肺胞から血液に溶け込み、全身に流れる。しかし、加齢とともにその機能が低下すると疲れやすくなる。とくに梅雨時は自律神経が乱れて呼吸が浅くなりがちだ。

 そもそも、仕事や遊びでスマホやパソコンにかじりつきの人は前かがみの姿勢が常態化し、胸いっぱいに空気を吸うことがない。どうすれば鍛えられるのか? 

 佐藤義男さん(仮名、52歳)は最近、カラオケで息が続かないことに気がついた。得意の演歌のサビの部分で息継ぎしてしまい、パンチの効いた歌い方ができないのだ。しかも、駅の階段の上り下りで息切れし、疲れやすくなったと感じている。

「私は太り気味ではありますが、健康診断では問題ないといわれていますし、肺が悪いと言われたわけではありません。たばこも吸いません。ただ、運動はまったくしない。疲れるのは空気を吸う力が衰えると全身に運ばれる酸素量が減って、細胞がエネルギー不足になるからでしょう。おそらくは呼吸をするための筋肉が衰えたのだと思います」(佐藤さん)

 実際、思い切り吸って勢いよく一気に最後まで吐き切る「努力性肺活量」(スパイロメーター検査・基準値は男性3500ミリリットル、女性2300ミリリットル)は健康診断で調べているが、3年連続で減少し、友人の医師からも「呼吸が浅くなっている」と言われたという。

「肺は自ら広がったり、縮んだりすることはできません。そのため呼吸の際、肺の周りにある外肋間筋や横隔膜、腹直筋や腹斜筋などを動かし、肺を収納している胸郭の容積を変えるのです。ところが加齢と共にこれらの筋肉が衰え、柔軟性が失われ、うまく胸郭を動かせなくなります」

 こう言うのはサラリーマンの病気に詳しい、弘邦医院(東京・葛西)の林雅之院長だ。

■毎日5分間、2週間続ける

 呼吸器筋を鍛える運動法はいくつもある。例えば、(1)両足を肩幅に開いて立ち、両手を胸の上において口からゆっくり息を吐く。その後、鼻からゆっくり息を吸い、頭を後ろに倒す。胸が膨らみ持ち上がるのを手で押し下げるようにする。吸い終わったら、口から息を吐きながら頭を元の位置に戻す。(2)床にあおむけに寝て、両足を椅子に乗せる。尻の下にタオルを敷き、腰を床から浮かせて太ももと床と垂直になるようにする。その状態で胸とお腹が同時に膨らむように深呼吸を5分間行う――だ。

「他にも縁日などでおなじみの『吹き戻し』を使って強く息を吐く。両手を組んでゆっくり息を吸いながら両腕を上げて後頭部に持っていき、強く吐きながら腕を振り下ろす。いわば剣道のエア素振りのような運動をすることで、横隔膜を意識的に動かすのも手です」(林院長)

 その結果、深い呼吸ができるようになり、全身に酸素が行き渡って“集中力や免疫力がアップ”“疲れにくくなる”などの他、“やせる”“太りにくくなる”などのメリットがあるという。

 実際、佐藤さんはエア素振りや、吹き戻しを毎日5分間、2週間ほど続けることで見違えるほど呼吸がラクになり、カラオケもスムーズになり、疲れにくくなったという。

「呼吸器筋が衰えた高齢者は、上体を揺らして呼吸する舟こぎ呼吸をするようになります。より多くの筋肉を使って空気を吸おうとして、多くのエネルギーを消費するようになるのです。それでも、酸素摂取量が減るので食事が十分とれなくなり、やせてしまいます。栄養不足から呼吸ができなくなり、心臓の機能も低下する悪循環に陥ります。そうならないためにも呼吸器筋を鍛える努力は必要なのです」(林院長)

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