今のところ、TAVIの対象になるのは、高齢者、過去に開胸手術を受けたことがある、肝臓疾患やがんなどの合併症があるなど、従来型の開胸手術リスクが高い患者さんです。しかし、これが仮に、外科手術が可能だったり、薬物治療で問題ない患者さんにまでTAVIが行われるようになったら、“ムダな治療”によって日本の医療費をますます圧迫することになってしまいます。
オプジーボに比べれば、文字通りケタ違いに小さな金額ですが、ここで考慮しなければいけないのは「医療の再生産性」です。現在、TAVIは「1年以上の延命効果が予想される患者」に対して適用されていますが、たとえば80~90歳以上の高齢者に対して600万円をかけて治療を行い、治療後1年で亡くなってしまった場合、費用対効果は極めて低いことになります。
一方、50~60代の肺がん患者に対し、年間3500万円かけてオプジーボを投与して有効だった場合、社会復帰した患者さんは、そこから20年近く働くことも可能です。この場合、再生産性は高いといえます。現在のTAVIの適用が果たして適切なものなのかどうか、改めて考える必要があるのです。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」