専門医が病気になったら飲む薬

【前立腺肥大症】トイレで同世代の“スピード”をチェック

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 前立腺は尿道を取り囲む器官。クルミほどの大きさながら、肥大してくると尿道が圧迫されて、オシッコの切れが悪くなる。トイレから離れてパンツに残尿が漏れるのは中高年男性にとって切実だ。前立腺肥大症は命を左右することはないが、男の生活や尊厳に影響を及ぼす点で、スルーは難しいだろう。

 昭和大藤が丘病院泌尿器科教授・佐々木春明氏が言う。

「前立腺肥大症は手術も可能ですが、最近は薬物療法が主流。私が発症したら、薬で治療します。そのタイミングの見極めは、トイレのスピード。百貨店や映画館など公共の場所のトイレに立ち、同世代くらいの人とオシッコの早さをチェックして、“明らかに負けた”というときから薬を飲み始めますね」

 前立腺肥大症の薬は、α遮断薬、5a還元酵素阻害薬、PDE5阻害薬などがあり、α遮断薬と5a還元酵素阻害薬が標準治療。佐々木氏もまず選ぶのはα遮断薬で、中でもハルナール。その効き目が悪くなったら、同じグループのユリーフに切り替えるという。それでもダメなら……。

「日中の残尿はゆっくりオシッコするなどすれば改善できますが、夜間頻尿で眠れなくなるのはつらい。不眠症で苦しくなったときは、PDE5阻害薬のザルティアに切り替えます」

 前立腺肥大症でもっとも厄介なのが、尿道が閉塞される尿閉だ。そうなると、オシッコができなくなるため、手術が避けられない。佐々木氏も、「そこまで悪化したら手術を受けるが、そうでなければ薬物治療で様子を見る」と言う。

 良性の前立腺肥大症ならいいが、万が一、前立腺がんということもある。そのリスクを未然に防ぐため、薬物治療で様子を見ながら、前立腺がんの指標となるPSA検査は欠かせない。