専門医が病気になったら飲む薬

【脂質異常症】悪玉コレステロール180以上で「スタチン」

我慢できる?
我慢できる?(C)日刊ゲンダイ

「一般的に悪玉コレステロールといわれるLDLコレステロールが180(mg/dl)以上なら『スタチン』を飲むべき。私がそうであっても、必ず飲みます」

 こう話すのは、東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科の坂本昌也医師だ。スタチンは脂質異常症の代表的な薬で、血液中のLDLコレステロールを減らす作用がある。プラバスタチン、アトルバスタチンなどスタチンという名がつく薬の総称だ。

 スタチンを飲むのは、なぜそのタイミングなのか。

「LDLコレステロール値が180以上は、一朝一夕に高くなるものではなく、長年の生活習慣でそうなったもので、一般的な食事や運動の改善で下げられるレベルをはるかに超えています。『必死に努力すれば下げられるのでは』と思う人もいるかもしれませんが、その努力がいつまで続くのか。続かなければ意味がない。そう考えると、薬が必要な病状です」

 もうひとつは、遺伝の可能性だ。最近、注目されているのが「家族性高コレステロール血症」と呼ばれる遺伝が関係しているケースで、それだとすると、そうでない人に比べて心筋梗塞のリスク確率が13倍にハネ上がる。

「両親双方あるいは片方から遺伝子を引き継いでいると、遺伝子の異常が関係しているため、コレステロール値が生活習慣の改善だけでは“安全域”まで下がりません」

 スタチンには、「腎臓障害を引き起こす横紋筋融解症や肝機能障害など重篤な副作用がある」ことから、一部に“スタチン悪玉論”を唱える医師もいる。坂本医師も「確かに重要な問題」と認めながらも、こう言う。

「重篤な副作用だからこそ専門医は常にチェックしており、少しでも疑わしい異変があればすぐに対処する。私が知っている限り、長期に副作用を見逃した医師はいません」

 副作用を恐れて薬を飲まずに放置すれば、動脈硬化が進み、後戻りできない状態になる。その先に待っているのは心筋梗塞や脳卒中だ。米国の複数の研究で、LDLコレステロールは低くした方が心筋梗塞、脳卒中の発症リスクを下げることが明らかになっている。

 なお、LDLコレステロールの基準値は140未満。140以上180未満の場合、中性脂肪の値や既往症などで薬が必要か判断される。