予防注射は効果があると分かってはいても、「注射は痛いので嫌だ」という人は多いと思います。その苦痛を解消する可能性があるのが、点鼻のワクチンです。これは注射をする代わりに、花粉症の治療で行うような鼻の中へのスプレーで、予防接種をするものです。
米国では2003年からインフルエンザの点鼻ワクチンが使用されています。日本ではまだ承認はされていませんが、発売に向けての臨床試験が行われています。
それでは、本当に鼻へのスプレーで風邪が予防できるのでしょうか? 風邪のウイルスは、鼻の粘膜から体に侵入しますから、そこに力を弱めたウイルスを噴霧して、免疫を作らせることは理にかなっています。ところが、最近になって「この点鼻のワクチンは効かないのではないか」という水を差すような報告がアメリカから寄せられています。
2013年から14年にかけてのシーズンで、09年に流行した当時の「新型インフルエンザ」と同じタイプのウイルスへの有効性を見たところ、「全く効果がない」というびっくりするような結果が得られたのです。さらに、翌シーズンも同様の結果であったため、米国当局は今年から点鼻ワクチンを推奨することを中止しました。
“痛くないワクチン”は、まだ、その効果については確実とはいえないようです。
医者も知らない医学の新常識