病気に潜む「脳の異常」

「過敏性腸症候群」は脳のストレスが引き起こす

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 検査しても原因がわからず、頻繁に下痢や便秘、腹痛に悩まされる「過敏性腸症候群」。

「鳥居内科クリニック」(東京・世田谷)の鳥居明院長が、医薬品メーカーの社員2000人を対象にしたアンケート調査では、約15%が「過敏性腸症候群」と認められたという。

 実はこの病気、関係するのは腸だけではない。

「発症の引き金となるのはストレスです。脳がストレスを感じると、自律神経のバランスが崩れるとともに、脳からストレスホルモンが分泌され、それが腸に影響します」(鳥居院長)

 その結果、腸の動きを過剰にしてけいれんを起こしたり、腸の感覚を過敏にしてしまう。

 こうした脳と腸の関わりを「脳腸相関」という。脳の不調がお腹を壊す原因になるばかりでなく、腸の不調が脳を混乱させることもある。例えば、腸に病原菌が感染すると脳で不安感が増すことがわかっている。近年では腸内の常在細菌が脳機能に影響を及ぼすことも報告されている。

 オハイオ州立大学の研究チームのリポートによると、生後18~27カ月の幼児77人の便に含まれている腸内細菌の種類と構成比を調べ、幼児の健康状態や性格についてその母親たちにアンケート調査したところ、腸内細菌の多様性があればあるほど「ポジティブ」「好奇心旺盛」「社交的」といった積極的性格に関係する傾向があったという。

「脳腸相関については、医学界でもまだまだ研究を重ねなければいけません。ただ、過敏性腸症候群などを起こす自律神経のバランスの乱れとともに、重要な要因は、『セロトニン物質』であることは間違いありません」(鳥居院長)
腸は第2の脳

 神経伝達物質であるセロトニンは、高度な情報交換をしている脳に集中していると思われがちだが、そうではない。実はその90%は小腸など消化管に存在し、腸は脳と独立した神経ネットワークを持ちながらも、脳と相互に作用しあっているのだ。このため、腸は「第2の脳」と呼ばれている。

 ちなみに、セロトニンの原料は必須アミノ酸であるトリプトファンという物質で、不足するとセロトニンの働きが鈍くなる。トリプトファンが多く含まれる大豆、牛乳、アボカド、バナナなどを食べると調子が良くなるというのは、神経伝達がスムーズになり脳の機能を整えるからだ。

 あなたのお腹の不調、原因不明のイライラ、不安感は脳腸相関が影響しているかもしれない。