「ロボットリハビリ」はどこまで効果があるのか?

フットドロップ・システム(左)とハンド・リハビリテーション・システム
フットドロップ・システム(左)とハンド・リハビリテーション・システム(提供写真)

 病気やケガによる後遺症のリハビリテーションを支えるために「ロボット」を活用する施設が増えている。従来のリハビリに比べ、どんな利点があるのか。「最先端ロボットリハビリ外来」を行っている第一病院(東京・葛飾区)の二宮淳一医師に詳しい話を聞いた。

 高齢化社会が進む日本では、脳卒中による手足の麻痺などの後遺症に苦しむ人も増えている。そうした状況に合わせ、リハビリのための機器やスタッフ、保険などの制度は充実してきてはいるが、その対象は、発症して間もない「急性期」や、治療後3~6カ月の「回復期」の患者のための制度が中心だ。

 一方、発生から6カ月以上たった「慢性期」の患者については、放置されているのが現状だ。保険制度により、病院でリハビリを受けられる期間は「180日以内」(150日の場合もある)と制限されているため、そこで中断してしまうケースも少なくない。さらに、慢性期になるとリハビリの効果がなかなか見られなくなることや、そこからくる意欲の喪失のために回復が一層難しくなって、あきらめてしまう人も多い。ロボットリハビリは、こうした慢性期の人に有効だという。

「従来のリハビリに比べ、ロボットリハビリは機能回復効果が高い。正しい動きや体の使い方をロボットがサポートしてくれるからです。そのうえ、最先端の訓練をしている感覚があるため、慢性期の患者さんもモチベーションがアップして、やる気が継続します。また当院では、180日を超えた患者さんが自宅でリハビリできるよう、都内で唯一、リハビリ用ロボットのレンタルも行っています」

 現在、国内で使用されているリハビリ用ロボットは、筑波大学発のサイバーダイン社の歩行訓練専用「ロボットスーツHAL」や、股関節の動きを補助するホンダの「歩行アシスト」など、上肢用と下肢用を合わせて10種類以上にのぼる。第一病院では、フランスベッド社の「バイオネスNESS H200 ハンド・リハビリテーション・システム」と「NESS L300 フットドロップ・システム」の2つのロボットを導入している。

 これらは「機能的電気刺激(FES)」と呼ばれる機器で、腕やふくらはぎに装着し、皮膚からの電気刺激によって筋肉をコントロールして筋力強化や麻痺の改善を促す。上肢なら手指の開閉や掴む離すといった日常動作の改善、下肢は歩行機能の改善が期待できる。「ロボットスーツHAL」や「歩行アシスト」などが自宅で使えないのに対し、これらの機器は非常に軽量で、レンタル向きだという。

 同院の「最先端ロボットリハビリ外来」で医師の診断を受けると、患者の状態やニーズに合ったリハビリプランが提案され、レンタルが必要な人には理学療法士から機器の詳しい使い方の指導が行われる。あとはロボットを自宅に持ち帰って、好きなときにリハビリを行える。レンタル料は1カ月1万8000円(1台)。通院せずにいつでも好きなときにリハビリができることを考えれば、決して高くはない。

 ロボットを活用することで慢性期でもリハビリに対するモチベーションが高まり、継続して行うことができれば、後遺症を治すことも可能だ。第一病院では、2014年4月の外来開設以来、90人が来院。上肢は33台をレンタルして2人が、下肢は19台をレンタルして4人が回復した実績がある。ほとんど手を動かせなかった患者さんが、ロボットリハビリによって食事などの日常動作ができるまでに改善し、喜ばれたケースもあるという。

 他にも、8種類のロボットを揃える佐賀大病院や、兵庫県立リハビリテーション中央病院など、ロボットを活用したリハビリ外来を行っている施設が増えている。思うようにリハビリが進まずに悩んでいる患者にとって、ロボットが救いになるかもしれない。

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