独白 愉快な“病人”たち

アッシャー症候群のジョー・ミルンさんは聾盲者メンターに

ジョー・ミルンさん(C)日刊ゲンダイ

 そんなふうにやりたいことを実現させてきたので、「人工内耳手術」という選択肢について深く知ろうとせずにいました。

 ところが29歳の時、「アッシャー症候群」の宣告を受けたのです。アッシャー症候群は先天的な病気で、難聴と徐々に視力が失われていく、治療法が確立していない病気です。耳が聞こえない上に、「視力まで奪われる」という恐怖。視界はだんだんと狭まり、それまでのドライブ通勤をやめ、全盲になる日に備えて盲導犬を依頼しました。

 最初に来てくれた犬は天真爛漫でかわいい子でしたが、自分の行きたいところを優先してしまうクセが直らず、途中で交代。その次に出会ったのが「マッド」でした。マッドによって行動範囲が広がり、こんなにも世界は美しいんだということに気づきました。

 このままチャレンジせずに終わるより、人工内耳の手術を受けて、よりポジティブに生きてみようと思ったのです。そして、1年にわたる適応テストの後、39歳で手術に踏み切りました。

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