病気に潜む「脳の異常」

慢性腰痛<1> 痛みの刺激が脳を壊す

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 カナダのマギル大学の研究チームが半年以上腰痛に悩む患者18人を調べたところ、DLPFCが健康な人の半分くらいしかないことが判明。痛みが長引いている人ほど、その働きが衰えていたという。

「最新機器で慢性腰痛の患者さんの脳を調べてみると、別の部分の萎縮が見られることが分かってきています。例えば、記憶や情動に関する扁桃体や、同じく記憶に関する海馬や帯状回、記憶のほか言語や聴覚にかかわる側頭葉、あるいは痛みに注意を向けるとより活性化する島皮質、やる気に関わる脳の側坐核などです」(大谷教授)

 慢性的な痛みの刺激が脳の灰白質を萎縮させ、痛みの抑制機能を低下させ、痛みの錯覚を起こす――。ドクターショッピングを続けている慢性腰痛の患者の一部には、脳の異変が原因になっているケースの患者が存在する。

 重要な点は、一度失われたこうした脳の機能は訓練によって取り戻せることだ。実際、2013年のカナダの研究では、痛みで体積が減少していると思われた灰白質は認知行動療法によって一部が回復したという。

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