天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

十分な検査ができないことで緊急手術の難易度が上がる

順天堂大学の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 心臓手術は、事前にしっかり検査や診断をしたうえで、計画的に行われる予定手術がほとんどです。突然、病状が急変して救急車で搬送され、時間的な余裕がない中で救命処置を行うような緊急手術は、実はそれほど多くありません。

「要請を受けてから24時間以内に手術を開始」したケースが緊急手術と定義され、多いところでは心臓手術全体の15%、順天堂医院では6~7%程度。1週間に1回行われるかどうかの頻度になります。緊急手術になるケースは、解離性大動脈瘤や大動脈瘤の切迫破裂といった大動脈の病気や、急性冠症候群の患者さんが目立ちます。

 緊急手術は、予定手術に比べると難易度が上がり、その分、患者さんの死亡率は5~7%くらいまでアップします。

 これは、予定手術の10倍程度の数字です。予定手術とは違って、術前に精密な検査を行えないことや救命処置をしながらの手術になっていることが大きな要因です。

1 / 4 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。