なぜこれほどの効果が得られるのかというと、ハーセプチンの薬の効き方にヒントがあります。がん細胞の表面には、人によってHER2というタンパク質が過剰に出現していて、このタンパク質はがんの増殖にかかわっているとされます。それと結合して増殖をブロックするのがハーセプチンです。
一方、従来の抗がん剤は、がんの原因となるようなDNAの複製や細胞分裂を抑える働きがあって、腸管や骨髄、毛根など細胞分裂が盛んな正常な臓器や組織にも作用します。副作用として下痢や吐き気、嘔吐、白血球の減少による免疫力の低下、脱毛が生じやすいのはそのためです。
がんに特異的に存在する分子にターゲットを絞ってピンポイント爆撃を仕掛けるのが、分子標的薬のハーセプチンで、体内に広くじゅうたん爆撃をするのが抗がん剤というイメージと思えば、理解しやすいでしょう。ハーセプチンにも悪寒や発熱などの副作用がありますが、抗がん剤ほど重くはありません。
Dr.中川のみんなで越えるがんの壁