病気に潜む「脳の異常」

男女で偏りも 「脳動脈瘤」は血管の形がコブの破裂に関係

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 毎年、約1万3000人の命が奪われている「脳動脈瘤」(クモ膜下出血)。国立循環器病研究センターによると「人口の2~6%」がこの病気にかかっているという。

「脳ドック」などの専門医師の診察で、もし脳動脈瘤が発見された場合、「瘤」(コブ=血栓)が破裂する確率は「1年に0.64%。1000人中6・4人の割合」(日本脳神経外科学会)だ。

 脳の底部を走行する1~6ミリの血管に発症するこの病気の怖いところは、コブが破裂するまで患者の大半に目立った自覚症状がないこと。コブが破裂し、頭を鉄棒で殴られたような激痛、吐き気、嘔吐の症状が出て、初めて自分が脳動脈瘤だと知ることになる。

 そのため、手術を受けても、命が助かる確率は50%ほど。運良く助かっても、ほとんどの患者が言語障害など重い後遺症を残してしまう。

 この脳動脈瘤がいつ破裂するのか。流体力学を応用して複雑な血液の流れをコンピューターで計算し、シミュレーション画像を開発したのが東京大学・大学院情報学環/生産技術研究所の大島まり教授だ。

「脳動脈の『コブ』がどのように発生し、なぜ破裂するのか。詳細に解明されているわけではありません。ただ、コンピューターを用いて血流による血管壁への刺激などをシミュレーションすることで、将来の動脈瘤の成長や破裂などの予測が検討されています」

 脳動脈瘤の発症原因は、遺伝のほかに、高血圧、加齢があり、食べ物も間接的に影響を与えていることがわかっている。しかし、大きな要因の一つは血流である。

「もし、血流以外の原因で脳動脈瘤が発症するのなら、脳動脈瘤は脳のいたるところの血管にできているはずです。ところが、脳動脈瘤が発症する場所は8割が3カ所に集中しています。いずれも動脈との分岐点で、血液の流れが速く、血流が血管の内側にある細胞(内皮細胞)をこする力(壁面せん断応力)が強い場所です」

 では、血流の速さと壁面せん断応力の強さを決めるのは何か?

「血管の形や血流の速さです。それによって血管内の血液は渦を作ったり、流れが滞ったりして血管壁への壁面せん断応力が変化します。その証拠になると思われるのが、男女でコブのできる場所に偏りが見られることです。女性は男性より比較的頭が小さいため、場所によって血管の曲がりがきつくなっているからだと考えることができます」

 ちなみに、粥状動脈硬化ができるのは、血流がよどんで血管壁せん断応力が低い場所であることがわかっている。

「血流の研究をもっと進めたら、脳動脈瘤はもちろん、動脈硬化症のリスクも減らすことができるはずです」