身近な薬の落とし穴

事故に繋がることも…咳止めが引き起こす“眠気”を侮るな

安易に多用してはいけない(C)日刊ゲンダイ

 またコデインリン酸塩には、適切に使っても、便秘、眠気、めまい、吐き気などの副作用があります。そのため、薬を服用したら、車の運転などの危険な作業は行わないように注意が必要です。

 実際、事故の被害に遭った患者さんがいらっしゃいました。ある日、いつも穏やかな患者さんが、怒った様子で薬局にやってきました。見れば、顔や腕にけがをしています。話を聞くと、交通事故の被害に遭い、相手のクルマに数メートルも引きずられたとのことでした。

 加害者は、眠気の副作用を起こす薬を飲んでいて、事故を起こしたことに気づかなかったといいます。患者さんの体の傷は数カ月で回復しましたが、今でも事故の記憶は消えないそうです。

 たかが眠気と侮ってはいけません。その副作用によって、重大事故の当事者になってしまう危険があるのです。市販の鎮咳薬だけでなく、総合感冒薬にも眠気の副作用があります。医師や薬剤師に相談して、薬は正しく使いましょう。

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中尾隆明

中尾隆明

1985年、愛媛県生まれ。愛媛県立南宇和高等学校を経て岡山大学薬学部を卒業。2008年からこやま薬局(岡山県)で管理薬剤師を務め、現在は企画運営部主任として各店舗のマネジメントを行っている。8月に著書「看護の現場ですぐに役立つ くすりの基本」(秀和システム)を発売。