満足度が肝心 睡眠に悩む50代が変えるべき「3つの行動」

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 早朝に目が覚めて、眠り直したいのに眠れない。若い頃のように長時間眠りたい……。加齢とともに表れる睡眠の悩みを抱えている中高年は多い。全国で睡眠セミナーを開催している作業療法士の菅原洋平氏に解決策を聞いた。

 人間は、年を取ると睡眠時間が短くなる。中高年になると基礎代謝が低下して、日中のエネルギー消費量も少なくなる。そのため、体が必要とする睡眠時間も短くなっていく。また、年を重ねて過去の経験が増えていくと、睡眠中に脳が行っている「記憶を定着させる作業」に費やす時間も短くなる。その分、長い睡眠時間が必要なくなる。

 男性の場合、55歳を境にこうした睡眠の変化が表れる。55歳を越えたら、睡眠時間が短くても問題ないし、若い頃のように長時間眠れないのも当たり前なのだ。しかし、そうはいっても「やっぱりぐっすり眠りたい」と悩んでいる中高年は多い。解決策はあるのか?

「睡眠を考えるとき、重要な要素が3つあります。①質(深く眠れているか)②日中に眠くならないか(睡眠時間が足りているか)③満足度(本人が納得できているか)です。①と②に問題がない場合でも、本人が納得していない③の状態だと、〈あなたはしっかり眠れていますよ〉といくら説明しても、睡眠の悩みは解決しません。逆に、③さえ満たされていれば、①と②が不十分でもトラブルは解消されます」

 中高年の睡眠の悩みは、いかに③満足度を高めるかが重要なのだ。

 睡眠の満足度が低い人は、他人と比較して自分は劣っていると感じているケースが多い。睡眠に対する感覚はあいまいで、実際は他人と自分を比べて優劣は決められないのに、いたずらに焦って悩んでいるという。

「ただ、いくら他人と比べないようにとアドバイスをしても、自分の〈考え方〉を変えることは難しい。そこで、まずは〈行動〉を変えてもらいます。行動を変えると考え方も変わり、満足度が高まるのです」

 変えるべき行動は3つ。①早い時間にベッドに入らない②夜中に目覚めても時計を見て時刻を確認しない③早く起きたからといって早く行動を始めない。これを2週間続けると、考え方が変わり、睡眠の満足度も高くなるという。

「身体的な障害ではなく、睡眠に悩んでいる中高年に質問をすると、①〈長時間寝たいと思っているから、早くベッドに入ろうとしていませんか?〉②〈夜中に目覚めてしまったことを確認するために、時計を見ていませんか?〉③〈早く目覚めて時間を持て余してしまうから、早く行動を始めていませんか?〉の3つにイエスと回答する人がほとんどです。ぐっすり眠りたいからと行っている行動が、かえって満足度を下げてしまっていることに気が付いていない。そこで、まずは行動を変えてもらいます」

■15分眠れなかったらベッドを出る

 少しでも長く寝ようとして早い時間にベッドに入ると、逆に寝付けなくて焦り、どんどん眠れなくなっていく。15分眠れなかったら、ベッドから出る。軽くストレッチなどをしながら、眠くなったらベッドに入るようにすればいい。

 夜中に目覚めて時計を確認する行動は、覚醒のリズムを早めてしまう。

「脳は、起床する3時間前から覚醒を促すホルモンのコルチゾールを分泌し始めます。夜中に目覚めたときに時計を確認して〈3時に起きてしまった〉という行動を繰り返すと、脳には〈3時に起床する〉というプログラムが組まれ、それに合わせて、コルチゾールの分泌を開始してしまうのです」

 早く起き過ぎてしまう人は、睡眠を促すホルモンのメラトニンの分泌が前倒しになっている。

「メラトニンは網膜が光を感知した時点で分泌がストップします。早すぎる時間に目覚めてそのまま日光を浴びてしまうと、脳はその時間が〈朝〉だと認識して、メラトニンの分泌リズムを早めてしまう。早く起きすぎてしまったらベッドから出て、自分が起きたい時間まで、暗い中で過ごす。目標の時間になったら、カーテンを開けて照明をつけるようにしてください」

 睡眠で悩んでいる中高年は、まずは3つの行動を変えるべし。

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