天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

難易度がアップする緊急手術でも焦ることはない

順天堂大学の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 時間的な余裕がない中で行う緊急手術は、予定手術よりも患者さんの死亡率が10倍(5~7%)ほどアップすることは、前回お話ししました。術前に精密な検査を行えないことや、救命処置をしながらの手術になることが大きな要因です。

 私自身、いまも緊急手術を年間十数例ほど行っています。予定手術に比べて難易度は上がりますが、だからといって焦ったり構えたりすることはありません。緊急手術が必要な患者さんに対し、やるべきことの優先順位を決めてあるからです。

 たとえば、救急搬送された患者さんのすぐ近くにいるスタッフには、心臓よりもまずは全身の臓器保護を優先してもらい、スタッフの人数が揃うのを待ってから心臓の処置を行う……といったように、患者さんの命を救える可能性がもっとも高くなる手順は、ある程度分かっています。それに対するガイドラインももちろんあります。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。