時間的な余裕がない中で行う緊急手術は、予定手術よりも患者さんの死亡率が10倍(5~7%)ほどアップすることは、前回お話ししました。術前に精密な検査を行えないことや、救命処置をしながらの手術になることが大きな要因です。
私自身、いまも緊急手術を年間十数例ほど行っています。予定手術に比べて難易度は上がりますが、だからといって焦ったり構えたりすることはありません。緊急手術が必要な患者さんに対し、やるべきことの優先順位を決めてあるからです。
たとえば、救急搬送された患者さんのすぐ近くにいるスタッフには、心臓よりもまずは全身の臓器保護を優先してもらい、スタッフの人数が揃うのを待ってから心臓の処置を行う……といったように、患者さんの命を救える可能性がもっとも高くなる手順は、ある程度分かっています。それに対するガイドラインももちろんあります。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」