心臓のトラブルで患者さんが搬送されると、救命スタッフはどうしても心臓をなんとかしなきゃ……という固定観念にとらわれてしまいがちです。しかし、まずは腎臓や肝臓などの重要臓器の状態を悪化させないことが重要になる場合が多いのです。もちろん冠動脈治療中の合併症で心筋梗塞が進行中の時などは例外で、一刻も早く心臓の安定を優先することは言うまでもありません。
危険な状態で搬送されてきた患者さんでも、助かったケースはたくさんあります。もともと患者さんの全身状態が悪くなかったというだけでなく、外科医が的確な手術を迅速に行えるかどうかも重要です。たとえば、解離性大動脈瘤などで大量に出血している患者さんの場合は、確実に出血を止めなければいけません。どこから出血しているのか、どんな処置をすればいいのかをしっかり見極める必要があります。
出血箇所は、もともとの病状や術中に同時に行う検査によって大体の見当がつきます。大出血を起こす場合は大動脈が多く、大動脈は心臓の付け根から手で触れられるところまでの部分で出血します。しっかり確認すれば、血管の内側から破れているところも分かります。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」