厚労省の人口動態統計によれば、年間に約2万5000人の日本人が自殺しています。宗教活動への参加が自殺リスクを低減させる可能性について、過去に複数の研究が報告されているようです。しかし、いずれも研究の方法論的な限界が指摘されており、その関連性について明確なことは分かっていませんでした。
そんな中、米国医師会の精神科専門誌(2016年6月29日付)に、「キリスト教礼拝への積極的な参加と自殺リスクの関連」について検討した観察研究の論文が掲載されました。
この研究は、米国の看護師を対象とした疫学調査のデータから8万9708人の女性(平均62歳)が対象となりました。キリスト教礼拝への参加頻度(週に1回、月に1~3回、月に1回以下、全く参加しない)と自殺リスクの関連を検討しています。なお、結果に影響を与えうる、年齢などの人口統計学的因子や生活習慣、病歴、抑うつ症状などで調整して解析しています。
その結果、週に1回以上の礼拝への参加は、全く参加しない人に比べて5倍以上の自殺リスク低下が示されました。特にカトリックの人たちは、約20倍も自殺のリスクが低いという結果になっています。
キリスト教では自殺は罪とみなされるため、対象となった参加者の多くが自殺に対してネガティブな感情を持っていたことは想像できます。礼拝へ積極的に参加する人では、その傾向がより強いということかもしれません。
しかしながら、信仰心が生きる力を肯定するというような可能性が示されていることは、とても興味深い結果だと思います。
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