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皮膚がん治療に年80億ドル NY市が打ち出した“苦肉の策”は

 ニューヨーク近郊のビーチやプールは、5月末のオープン以降、連日多くの人で賑わっています。そんな中、ニューヨーク市がビーチやプール、公園に「無料の日焼け止めディスペンサーを設置する」計画を発表しました。

 アメリカ人が最も多くかかるがんの第5位が皮膚がんです。特に「メラノーマ」と呼ばれる皮膚がんは、発生率は低いものの死亡率が高いために恐れられています。そして、アメリカではこのメラノーマの患者がここ40年で3倍に増加しました。

 メラノーマは、肌の紫外線への過度の露出が大きな原因です。オーストラリアやニュージーランドなど赤道に近い国で最も多く発生していて、肌の色が薄い白人が発症するリスクが高い。アメリカでも白人の間で発生が増加していて、その理由として「アウトドアスポーツが盛んになり、さらに日焼けマシンの使用が増えた」ことが指摘されています。

 自治体や学校、メディアでは「ビーチや公園などで日光を浴びる時はもちろん、街の中でも日焼け止めを使用するように」と呼びかけています。今回はそれを一歩進め、無料の日焼け止めを設置し、手軽に利用してもらおうというのです。

 実は、ニューヨークより一足早く、ボストン市内の公園とマイアミの海水浴場数十カ所に、去年から無料の日焼け止めディスペンサーが設置されました。企業などとのパートナーシップで税金を一切使わない方法も好評で、全米の各自治体も導入を検討しています。

 皮膚がん治療のために年間80億ドルもの医療費が使われているアメリカですから、海や公園の無料の日焼け止めは、近い将来、常識になるかもしれません。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

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