これで痛みを取り除く

「帯状疱疹」 長引かせないために早めの神経ブロック注射

 帯状疱疹(たいじょうほうしん)は、子どもの頃に経験した“水ぼうそう”のウイルスが体内の神経節という場所に隠れていて、大人になって免疫力低下などをきっかけに再び暴れ出して発症する。症状は、体の左右どちらか(多いのは胸から背中かけて)に、耐えがたい痛みが表れ、少し遅れて皮膚に赤い発疹や水ぶくれが帯状に表れる。

 痛みは「焼けるような灼熱(しゃくねつ)痛」「突き刺すような刺痛」「電気が走るような電撃痛」など、感じ方や強さが人によって異なり、軽く触れただけでも痛むアロディニア(知覚異常)を伴う場合もある。NTT東日本関東病院・ペインクリニック科の安部洋一郎部長が言う。

「皮膚症状は時間の経過と共に治まりますが、痛みは発症2週間後に最も強くなり、夜眠れないこともあれば、仕事にも支障をきたします。それに皮膚症状が治っても痛みだけが残ったり、数カ月~数年後にまた痛みが出現することもあります。帯状疱疹は疼痛(とうつう)ケアが最も重要になるのです」

 帯状疱疹の痛みには、1カ月未満の痛みの「急性期痛」、1~3カ月未満の痛みの「亜急性期痛」、3カ月以上続く痛みの「帯状疱疹後神経痛(PHN)」がある。帯状疱疹の10~20%がPHNに移行するといわれる。

「急性期痛はウイルスによる皮膚や神経の炎症による痛みです。一方、PHNの痛みは神経の損傷による神経因性疼痛と、耐えがたい痛みの記憶による心因性疼痛によって生じます。ですから一度、PHNに移行してしまうと治りにくいのです」

 そのため、痛みの性状が変化する前に急性期の段階で薬物療法(内服や外用)だけでなく、神経ブロック(麻酔薬の注射)を併用した方がPHNになりにくい。発症後2週間以内、遅くても1カ月以内に神経ブロックを開始した方がいいという。

 では、PHNになったらどうするのか。一般の鎮痛薬と作用が違う痛みを取る薬(抗うつ薬、抗てんかん薬、医療用麻薬など)と、神経ブロックを併用する。

「神経ブロック(2~3週間に1回)を使うと飲み薬の量を減らせます。神経ブロックの効果期間が短くなった人には、患部に電極針でパルス状に高周波を当てる『パルス高周波法』(外来で1~3カ月に1回)を検討します。それも効かなくなるようなら、疼痛除去用の脊髄電気刺激装置を植え込む方法もあります」

 若ければ薬だけでも痛みをコントロールできるが、高齢になるほど除痛効果は落ちる。PHNは心因性疼痛の要素が強いので、悲観的にならずプラス思考で生活することが非常に大切。体をよく動かし、血のめぐりをよくすることでも痛みの感じ方が軽くなる。