「衛生仮説」なる言葉をご存じでしょうか? 乳幼児期の衛生環境が免疫機能に影響を及ぼし、アトピーやぜんそく、花粉症などアレルギー性疾患の発症に影響を与えるのではないか、という仮説のことです。
乳幼児によくみられる「指しゃぶり」は決して衛生的には見えません。手指にはさまざまな細菌が付着しており、それを口腔内に入れるわけですから、細菌をなめているようなものです。指しゃぶりになんとなく悪いイメージを持たれる方も多いかと思います。
しかし、指しゃぶりをやめさせることが必ずしも健康的であるかというと、これもまたそうでもないようです。
米国小児学会誌(2016年7月11日電子版)に小児の指しゃぶりや爪を噛む習慣と、アトピーなどのアレルギー性疾患発症の関連を検討した論文が掲載されました。
この研究はニュージーランドで出生した1037人を対象に行われた研究で、5歳、7歳、9歳、11歳の時点で親に対して、子の指しゃぶりや爪を噛む習慣について調査しています。アトピーについては、13歳と32歳の時点での皮膚に対するアレルギー反応テストで確認されました。なお、親のアレルギー歴、犬や猫の飼育状況など結果に影響を与えうる因子で調整して解析しています。
その結果、指しゃぶりや爪を噛む習慣のある人では、習慣のない人に比べて、アレルギーテストによる反応が、13歳時点は36%、32歳時点では38%、統計的にも有意に低いという結果が示されました。
もちろん、因果関係を決定づけるものではありませんし、アトピー性皮膚炎発症リスクを検討したものではないので、結果の解釈に注意が必要です。しかし、衛生仮説を支持するような結果となっていて興味深いです。
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