良医が警告 やめてはいけないクスリ

糖尿病薬をやめると症状が一気に悪化することも

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「患者さんによって避けた方がいいクスリがあるのは事実です。しかし、それは一定の条件下にある少数の患者さんで、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。避けた方がいいクスリがあったとしても、それはクスリをやめていいという意味ではないのです」

「飲んではいけない」などとクスリを否定的に報じる週刊誌の記事に困惑顔なのは、糖尿病専門医で「しんクリニック」(東京・西蒲田)の辛浩基院長だ。辛院長はこれまでも医師に相談せずクスリをやめ、大変な目に遭ってきた糖尿病患者を大勢見てきたという。

「40代の男性の患者さんは、HbA1cが9%から6%台に数値が下がって半年ほど経ってから“糖尿病は治った”と勝手に判断。クスリをやめ、通院もしなくなりました。それから8カ月ほどして、“目の前にゴミが飛んでいて目をこすっても取れない”“調子が悪い”などと言って駆け込んできたのです。検査するとHbA1cは10%に上昇。それまでのように飲み薬では血糖を下げられず、インスリン注射での治療が必要になりました」

 飛蚊症は、糖尿病の悪化による重度の網膜出血が原因。すぐにレーザー治療が必要な状態だった。なかには腎症を起こしていきなり透析が必要となったり、高血糖性ケトアシドーシスで昏睡状態となり病院に担ぎ込まれる患者も少なくない。

「糖尿病は基本的に治りません。クスリは食事制限や運動療法でも止められない病気の進行を抑えてくれているのであって、クスリをやめれば、一気に症状が悪化するのは当然です。その段階で再びクスリを飲もうとしても症状が進んでいますから、当初の状態に戻すためにクスリの量を増やしたり、作用の強いクスリを使うことになるのです」

 また、複数のクスリを飲んでいて1剤だけ勝手にやめてしまう糖尿病患者がいるが、問題だ。

「糖尿病のクスリは、①膵臓を刺激してインスリンを分泌させる②食べ物の吸収を遅らせ食後の血糖上昇を抑える③肝臓や筋肉でのインスリンの効果を高める、など3つに大別されます。複数のクスリを使うのは、その方がより大きな効果が得られるからです。1剤やめても数カ月は大きな変化はないかもしれませんが、長期間続けると膵臓が疲弊し、インスリン注射が必要になるなど、大きなデメリットになります」

 クスリには副作用がある。医師はそれを理解したうえで患者に最も望ましいクスリを選んでいることを忘れてはいけない。