ダイエットを科学する

「やせの大食い」は食べた物の“小腸通過時間”が短い

ギャル曽根はスリムな体型をキープしている
ギャル曽根はスリムな体型をキープしている(C)日刊ゲンダイ

 同じものを同じ量食べているのに、太っている人とそうでない人がいる。身近に見聞きする話だ。その原因は3つあり、そのひとつが「肥満遺伝子にある」という話を前回した。では残りの2つは何か。

 食べた物が小腸粘膜を通過する時間と、基礎代謝(生命維持エネルギー)量だ。日本肥満学会評議員であり東京慈恵会医科大学大学院の和田高士教授(健康科学)が言う。

「食べ物が小腸を通過する時間が長い人は吸収力が高く、太りやすいことが知られています。わかりやすいのはテレビ番組の大食いチャンピオンです。他人の10倍ぐらい食べているのにスリムな体形を維持している。これは食べ物を吸収しないからです」

 和田教授によると、かつて、大食いがウリのタレントの消化管の動きを検査したデータを見ると、食べ物が消化管を通過するスピードは普通の人の数倍の速さだったという。

 人が口にした食べ物は食道を通り、胃で消化され、小腸で吸収される。小腸は6メートル近い長さがあり、5~8時間で通過する。消化の悪い場合は10時間以上かかることもある。この間、食べ物に含まれる栄養素と水分の90%が吸収される。

 消化時間にこれほどの幅があるのは、人によって腸の長さが違ったり、食べ物によって消化のスピードが違うからだ。

 むろん、個々人の小腸の運動力の差もある。小腸は消化された食べ物を輸送したり、消化液としっかり混ぜ合わせるために「蠕動運動」「分節運動」「振り子運動」といった動きを行う。

「こうした小腸の動きを人為的に変えることは難しい。そうなると、個人の努力で最もダイエット効果が出るのは『基礎代謝を上げる』ということになります。それにはまず、食事と運動です。日本肥満学会では行動療法に沿った食事や運動の指導を推奨しています」

 日本肥満学会では、リバウンドを避ける意味でも1カ月1キロ、3カ月で3キロ、ウエスト周囲径3センチ減らす「サンサン運動」を提唱している。

「ダイエットの目的はあくまでも健康的な体になること。肥満とともに腹腔内に脂肪がたまるハイリスク肥満症、すなわちメタボリックシンドロームは、高血圧、2型糖尿病、脂質異常症を併発しやすく動脈硬化を促進し、心疾患や脳卒中増加の主因となっています。それを防ぐ意味でも食事と運動に力を注いでいるのです」

 次回は、大分大学が大きな成果を挙げているという、行動療法の具体的なやり方を紹介しよう。