Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【遺伝子検査】入念なカウンセリングなしに受けるのはNG

遺伝子検査は遺伝カウンセリングとセットで考えて(C)日刊ゲンダイ

 ですから、がんの遺伝子検査を受ける場合、本人だけでなく、家族も含めて病歴や背景を丁寧に調べることが不可欠。それが遺伝カウンセリングです。

 初回のカウンセリングで遺伝性のがんが疑われると、遺伝子検査の説明があり、2回目のカウンセリングで検査を受けるかどうかの意思確認をします。3回目は検査結果の説明で、変異ありと判断されると、経過を観察したり予防策を検討したりして、4回目以降に予防切除を受けるか、家族の対策はどうするかといった具体的なステップに進むのです。

 アンジーの動きが早かったため、“異常があればすぐ切除”のイメージを持った人がいるかもしれませんが、それも正しくはありません。

 検査結果の影響は、本人や家族、ひいては血縁者にも及ぶため、中には事実を知りたくない人もいるでしょう。周りの心理的な負担が決して小さくはないのです。変異ありでも治療しないという選択をしてもよく、治療するにしても、経過を観察しながらしかるべきタイミングを待つという判断もあります。

 難しい判断の連続だけに、遺伝子検査は遺伝カウンセリングとセットで考えてください。遺伝カウンセリングなしに遺伝子検査を受けてはいけません。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。