サインを見逃すな! 脳梗塞の“前触れ”は目に表れる

軽く考えると…
軽く考えると…(C)日刊ゲンダイ

 脳梗塞は脳の血管が詰まり、脳細胞が壊死する病気だ。推定患者数は約92万人で、夏に発症することが多く、年間7万人が死亡する。命が助かったとしても深刻な後遺症を残す。突然発症するイメージがある病気だが、前触れがある場合も。何をキャッチすれば、命を永らえることができるのか?

 高血圧と糖尿病を患う加藤満さん(仮名=68歳)は昨年8月初旬、食事中に異変を感じた。右手の力が抜け、箸を落としてしまった。慌てて立ち上がろうとしたところ右足にも力が入らず、よろけた。熱中症を疑い、水を飲み、じっとしていたら症状が消えた。そのまま放っておいたが、3日後に救急車で運ばれた。脳梗塞だった。

「これは脳梗塞が起きる前に時々みられる『一過性脳虚血発作』(TIA)の典型です。ろれつが回らない、言葉が出ない、人の話し言葉が理解できない、片側が麻痺したり、しびれたりするなどの症状がこれにあたります。ところが、その多くは数分で症状がなくなってしまう。そのため、“疲れのせいだろう”と軽く考え、それを見逃してしまうのです」

 こう言うのは国家公務員共済組合連合会「立川病院」脳神経外科の福永篤志医長だ。

■シャッターが下りたように目の前が真っ暗になったら…

 問題は、この病気を放っておくと、3カ月以内に15~20%が脳梗塞を発症し、そのうち半数はTIAを起こしてから数日以内、特に48時間以内に脳梗塞になることだ。

 実はTIAを起こした後、早期に脳梗塞を起こすリスクを予測する方法がある。「ABCD2」スコアだ。これはTIAが起きた時点での「年齢」(60歳以上は1点)、「血圧」(140/90mmHg以上は1点)、「症状」(片側麻痺は2点、麻痺なしのろれつ障害は1点)、「症状持続時間」(60分以上2点、10~59分1点)、「糖尿病」(ありは1点)を計算するもの。合計が3~4点以上になると、本格的な脳梗塞リスクが高いといわれている。この段階で飲み薬やカテーテルによる血管内治療、外科手術を行えば、本格的な脳梗塞を回避できる。

 とはいえ、冒頭のTIAの症状は、すでに脳の奥深くの血管が一時的に詰まっている危険な状態。いきなり本格的な脳梗塞が起こっても不思議ではない。それ以前に予兆をキャッチするにはどうしたらいいのか?

「目の異常に気をつけることです。TIAは大きく分けて2つの原因で起こります。動脈硬化と心臓の病気です。動脈硬化が原因で起きるTIAのうち、半数近くが頚動脈のプラークが脳の動脈に飛んで一時的な脳虚血を起こします。その多くが脳の中に入った直後にある目の動脈を塞ぎます。ですから、突然シャッターが下りたように目の前が真っ暗になったり、視野が狭くなったり、物が二重に見えたりした場合は、TIAを疑い、ためらわず病院で診てもらう必要があります」(福永医長)

 中には、どこで診てもらえばいいか分からないという人もいるだろう。望ましいのは脳神経外科や神経内科、脳卒中科のある病院だ。

 TIAとは別の原因で起こる症状もあるが、脳梗塞に襲われた後で「あのとき、病院に行っておけばよかった」と後悔しても遅すぎる。疑問があれば恥ずかしがらず、病院で診てもらうべきだ。

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