リオ五輪がもうすぐ始まります。各国代表の“超人たち”の活躍を楽しみにされている方も多いと思いますが、彼らの心臓はどうなっているのでしょうか。
アスリートの心臓は、その筋肉が手や足の筋肉と同じように厚くなっています。これは「スポーツ心臓」という名前の心肥大です。一方で、高血圧や心臓の病気でも心肥大は起こります。こちらは病的な心肥大です。
ところが、見た目はアスリートの心肥大も、病気による心肥大も、心臓の壁が厚くなっており、違いはありません。それでは、一体何が違うのでしょうか。
アスリートの「スポーツ心臓」は、正常な心臓の筋肉が肥大しています。しかし、病的な心肥大は筋肉よりも線維などの成分が異常に増殖して、見た目は肥大であっても、実際には心臓の働きは低下しているのです。
ただし、運動も高血圧も、「心臓に負荷がかかる」という点には違いはありません。同じように負荷がかかったのに、どうして心肥大の内容に違いが出るのでしょう? 昨年の「セル・メタボリズム」という専門誌に掲載された論文によると、運動では「マイクロRNA」という特殊な遺伝子のかけらのようなものが増えるので、正常な筋肉が肥大します。ところが、高血圧のような病的な負荷では、そうした遺伝子産物の増加は起こらない。これが両者の違いだと説明されています。
心臓の肥大する仕組みというのも、意外に奥が深いもののようです。
医者も知らない医学の新常識