良医が警告 やめてはいけないクスリ

「スタチン」は副作用リスクより突然死を防ぐ利点が大きい

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 順天堂医院院長の天野篤教授(心臓血管外科)は、「心臓病を予防するために、中高年男性が最も重視してコントロールしなければならない危険因子はコレステロール」だという。

 コレステロールは、増えすぎると血管壁に蓄積して動脈硬化の原因になる。動脈硬化は心臓疾患や脳卒中の大きなリスク因子で、それらの病気が突然死を招く恐れもある。日本人のコレステロール値は1980年を過ぎてから急激に上昇し、2000年ごろから総コレステロールの平均値が欧米の水準以上に高くなっている。もともと、日本人男性はLDL(悪玉)コレステロールが高く、HDL(善玉)コレステロールが低い傾向にあるため、突然死のリスクが高まっているともいえる。

 健診などで高コレステロールを指摘された人は、運動や食事でコントロールしようとするケースが多い。しかし、それまでの生活を突然改めて節制に努めることは簡単ではない。働き盛りの中高年はなおさら難しいから、薬でコレステロール値を改善するしかない。

 コレステロール低下剤は、「スタチン系」(クレストール、リピトール、リバロ、メバロチンなど)が多用されている。報道では、「筋肉が溶ける横紋筋融解症、筋肉痛、手足のしびれ、こむらがえりなどの副作用や、重症化すると腎不全を起こす場合もある」と指摘されているが、いたずらに怖がる必要はないという。

「たしかに、筋肉痛や関節痛といった副作用は起こります。しかし、筋萎縮や横紋筋融解症などの重篤な副作用を起こすのは非常にまれなケースです。信頼できる医師のもとで、定期的に血液検査を受けながら服用すれば、そこまで心配しなくてもいい。副作用の初期症状として肩や膝の関節痛などを感じたら、1週間ほど休薬すれば大丈夫なことがほとんどです」(天野教授)

 実際、天野教授はコレステロール値が気になり始めた45歳ごろから15年以上もスタチンを服用しているという。

「宝くじで1億円が当たるのと同じような極めてまれな事象を、誰にでも起こり得ることのように考えるのは間違っています。確率がゼロではないから不安だという心情から薬を避け、高コレステロールの状態を放置することによるデメリットよりも、きちんと管理しながら服用することで得られるメリットの方が格段に大きい」

 薬を処方する際、ほとんどの医師は「症状」と「生検体(血液や尿など)」によって、どの薬にするかを決めている。また、薬が効果的に作用しているかどうか、重篤な副作用の前兆がないかどうかも、症状と血液検査のデータを見て判断している。定期的な検査を欠かさずに薬を服用すれば、患者は大きなメリットを享受できるのだ。