これで痛みを取り除く

骨転移の痛みは程度に合わせて医療用麻酔を使う

 骨転移を起こしやすい代表的ながんは、「肺がん」「乳がん」「前立腺がん」「腎臓がん」など。骨転移は必ず痛みが出るとは限らない。しかし、痛みが出始めると場所のはっきりした鋭い強烈な痛みに苦しめられる。東邦大学医療センター大森病院・緩和ケアセンターの大津秀一センター長(緩和医療専門医)が言う。

「肋骨や腕などにも転移しますが圧倒的に多いのは背骨です。患者さんが『腰が痛い』と訴えて整形外科で調べてみたら、初めてがんが見つかるケースもあります。骨転移の痛みは、動くと痛みが強くなるのが特徴です」

 骨転移が見つかれば、外科治療や抗がん剤治療、放射線治療と並行して痛みを取る治療(緩和ケア)を行う。

「骨転移自体の治療で除痛効果が高いのは放射線治療です。ただし、一般的には4週間くらいかけてジワジワ効いてくるので、鎮痛薬を上手に使いながら痛みをコントロールしていきます」

 骨転移は炎症性の痛みが強い。そのため緩和ケアの治療は、非オピオイド鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬)がベースになる。しかし、その鎮痛薬だけでは完全に痛みを抑えきれない。痛みの程度に合わせて、強・弱など種類がたくさんあるオピオイド(医療用麻薬)を加えるという。

「非オピオイド鎮痛薬は使用できない患者さんがいます。例えば、腎機能が悪かったり、胃潰瘍があるような方がおられます。しかし、別の方法があります。非オピオイド鎮痛薬でも抗炎症作用のないアセトアミノフェン(解熱鎮痛薬)とオピオイドを組み合わせて痛みを取ります」

 それぞれの薬の作用機序が違うので、それをうまく組み合わせるのがポイントになるという。

 また、体を動かしたときに一時的に痛みが強くなる突出痛(平均持続時間15~30分)の対応も重要だ。突出痛には、即効型のオピオイドを頓服薬として使うという。

「これらの薬とは別に、骨粗しょう症の治療にも使われるビスホスホネートや、デノスマブなどの骨に作用する薬剤を使う方法もあります。骨吸収を阻害する薬で、直接的な鎮痛薬ではありませんが、骨転移では、使用し始めて2~8週で中等度の鎮痛効果があることが分かっています」

 骨転移は痛みさえ取れれば生活に支障がなくなる。必ず緩和ケアができる医師に相談しよう。