わが子の“稼ぐ力”をどう鍛えるのか?――。親なら、誰しも気にしていることだろう。勉強して学歴さえ得ればカネを稼げる職業に就けたのは過去の話。いまの中学2年生が大学受験を迎える2021年には新たな制度がスタート。知識の詰め込みだけでは正社員にすらなれないかもしれない。ならば、わが子の裸眼視力を維持させる手段を講じてはどうだろう。目がいいことは一種の才能。“稼げる職業”に就ける可能性は高くなる。
平成27年度学校保健統計調査によれば、裸眼視力1・0未満の子供は小学生31%、中学生54%、高校生64%だという。
その一方で、一定の視力を必要とされる職業は、パイロット、警察官、消防官、自衛官、海上保安庁職員、客室乗務員など多い。JRA騎手や競艇選手のように裸眼視力0・8以上でメガネやコンタクト、レーシック手術不可という職種もある。
ちなみに、「地方公務員給与実態調査」(総務省発表平成26年度)によると、諸手当を含めた平均給与月額は警察官や消防官は教員よりも高い。
では、手術せずに近視を改善、メガネやコンタクトなしで生活するにはどうしたらいいのか?
その答えとなるのが「オルソケラトロジー」だ。特殊なコンタクトレンズを装着して角膜の角度を変え、近視を矯正する。一定の装着時間が必要なため、就寝時に使われることが多く、別名「ナイトコンタクト」と呼ばれている。
■0.03程度が1.5に回復した例も
眼科専門医で「清澤眼科医院」(東京・江東区)の清澤源弘院長が言う。
「レーシック手術と違って、レンズ装着をやめればすぐに元に戻せるのがメリットです。軽度から中程度の近視を対象にしているため、強度近視には対応できませんが、最近は強度近視でも効果がある最新レンズを使った方法も登場しています」
その効果は抜群で、0.03程度だった裸眼視力が1.5に回復した例なども報告されている。
ただし、小児に対するオルソケラトロジーはあくまでも医師の裁量権の範囲で行う自由診療の治療だ。そのため現状では眼科医以外の医師や眼科医であってもハードコンタクトレンズをほとんど扱ったことのない医師が治療するケースもある。そうなると、角膜に傷がつき、重い感染症を患う危険もある。
「だからこそコンタクトレンズの治療経験が豊富で、オルソケラトロジーに詳しい眼科専門医にかかる必要があります」
日本コンタクトレンズ学会が定める現在のガイドラインでは、親権者の同意が必要となる「20歳未満」にはこの治療法を推奨していない。
しかし、日本眼科医会のメンバーが作成した「オルソケラトロジーに関するアンケート調査 集計結果報告」(181施設回答)によると、治療対象年齢は小学生25%、中学生~19歳41.1%、20歳以上33.2%。ガイドラインと違い、小児への治療が行われている実態が明らかになっている。
「国外では効果が出やすい小児に行うのが常識です。もともとオルソケラトロジーは近視矯正の手段というより、近視進行を抑制することが重要な目的です。実際、最新の発表を聞くと、『オルソケラトロジーが将来の失明リスクを伴う強度近視発生を防ぐ可能性がある』と報告しています。日本でこの治療法の承認を得る際、20歳以下の被験者を募ることが困難だったため適用年齢が20歳以上になったに過ぎません。小児への治療を肯定的にとらえたこの調査結果と追加の治療実験結果から、いずれ対象年齢は引き下げられるでしょう」
治療費は医療機関によってさまざまだが、標準的には両目で20万円程度の初期費用と、3年ごとに10万円程度のメンテナンス料が必要だ。震災時にも裸眼視力が良ければ困らない。夏休みに家族で相談してはどうだろう。