ただ、自分の心臓とそっくり取り換える完全置換型は、まださまざまなトラブルを起こす可能性があって、莫大な費用もかかります。人工心臓が普及し始めたのは、少しでも動いている心臓を生かしながら、ポンプ機能を助けてあげる補助人工心臓が進化してきたからといってもいいでしょう。
かつての補助人工心臓は、「血液を循環させるためには大がかりなポンプ機能が必要だろう」と考えられていたため、ポンプとして駆動させるドライブユニットの大きさが小型冷蔵庫くらいありました。当然、ドライブユニットは体外に設置されるので、日常生活も元通りとはいきません。
それが、拍動がなくてもポンプ部分の内部にスクリューやプロペラを設置して血液を送り出せば問題ないということがわかり、「軸流ポンプ」や「遠心ポンプ」といった無拍動流ポンプが開発されるなど、小型化が進みました。いまは、腕時計くらいの大きさでも、かなりの量の拍動が出るタイプが開発されたり、残した心臓に設置する方法がマグネット式で可能になり、トラブルになったときに交換しやすい工夫も進歩しています。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」