扁桃肥大、鼠径ヘルニア…夏休み“子に受けさせたい”治療

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「不機嫌だった寝起きもスムーズになり、いびきをかきながら動き回り、苦しそうだった寝顔も穏やかに。ぼんやりした性格が活発に。昼間の集中力が高まり、成績も上がりました」

 こう笑顔を向けるのは、昨年の夏休みに小学校3年生の長男にアデノイドと扁桃の切除手術を受けさせた田中真理子さん(仮名、42歳)だ。体が弱く、すぐに高熱を出していた長男は通年性のアレルギー性鼻炎があり、近所の耳鼻咽喉科の医師から「扁桃が大きく、睡眠時無呼吸症候群の疑いがある」と指摘されていた。「荻窪中尾耳鼻咽喉科医院」の中尾雄二院長が言う。

「夏休みを利用して、子供の手術を行う家庭は少なくありません。この病気の原因はさまざまですが、小児の場合は通年性のアレルギー性鼻炎のほか、アデノイドや扁桃の肥大が挙げられます。これらが複合的に絡み合って発症する場合が多いのです」

■集中力の欠如など成長の妨げになることも

 アデノイドとは、のどちんこの裏側にあるリンパ組織で咽頭扁桃ともいう。幼児期に大きくなり、6歳ごろをピークに増大し、その後少しずつ縮小するが、人によってはこの肥大により、鼻や耳、のどに慢性炎症を起こすことがある。

 扁桃は口蓋扁桃とも呼ばれ、のどちんこの両横にあるリンパのこぶを指す。扁桃はアデノイドと違い、成長によりやや縮小はするものの、大きいまま大人になることが多いので注意が必要だ。

「アデノイドは成長につれて縮小しますので、治療しないでいいように思えるかもしれません。しかし、睡眠中に分泌される成長ホルモンが十分出ない、また日中の集中力の欠如など成長の妨げになる、そう判断される場合は、治療が必要になります」(中尾院長)

 素人にはそのタイミングが分からないが、いびきが目安になる。正常な子供は大人と違っていびきをかかないという。手術日数の目安はアデノイド切除手術が3泊4日、扁桃切除手術は1週間程度だという。

■そけいヘルニアや近視進行抑制の点眼も

「飛び出した」という意味を持つ「そけいヘルニア」は、0~15歳の子供と、40歳以上に発症しやすい。太ももや足の付け根のそけい部に、しこりのような膨らみや腫れが生じ、こぶし程度の大きさになると痛みが伴う。

 放っておくと、最悪、飛び出している臓器が腐る「ヘルニア嵌頓」になる。女児の場合は腸でなく、卵巣が脱出する危険もあるという。6000例のそけいヘルニア手術をこなした外科医で「薬師台おはなぽっぽクリニック」(東京・町田市)の野口泰芳院長が言う。

「子供のそけいヘルニアは原因が先天性のもので、根治治療は手術以外にありません。男女の比率は男の子が8割ぐらいでしょうか」

 子供の手術は局所麻酔して2~3センチ切開脱出した部分を根元でしばり切除する「ポッツ法」が一般的だ。手術時間は15~40分で、日帰り手術が可能だ。手術費用の目安は、3割負担で3万~5万円だ。

「まれに再発し、大人になってから反対側に発症することも。同じ側の別の部位がヘルニアになるケースもあります」(野口院長)

 ちなみに「脱腸バンド」は脱腸部分を押し込むだけで、根本的な治療にはならない。

 近視の子供には「0.01%の低濃度アトロピン点眼治療」がある。

「シンガポールの国立眼科センターは2年間の研究で有効としています。副作用や点眼中止後のリバウンドも少なかったそうです」(眼科医)

 日本では複数の大学が治験中で「18カ月の研究では効果は確認できない」との中間報告もある。全額自費だけに事前に専門医への相談が必要だ。

 現在、小中学生の医療費を補助しており、無料という自治体も多い。よく考え、まとまった休みを有意義なものにしたいものだ。

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