良医が警告 やめてはいけないクスリ

高血圧の人が服用やめる条件 最少用量3カ月&血圧130未満

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 すぐに「薬をやめなさい」と言わんばかりの週刊誌の記事が話題だ。とくに血圧を下げる薬は「始めると死ぬまでやめられない」というイメージがある。驚いて当然だ。

 実際、長く薬を飲み続けている患者は「このまま飲み続けていて本当にいいのだろうか」という疑問が浮かんでくるという。それだけに、「血圧の薬は意味がない」という趣旨の記事を見ると、「もう薬はやめてしまおう」という誘惑に駆られるに違いない。

 では、血圧を下げる降圧剤は本当に一生やめられないのだろうか? 人気の医師ブログの著者で「北品川藤クリニック」(東京・北品川)の石原藤樹院長が言う。

「必ずしもそうではありません。別の病気が原因で血圧が上がっているのではない『本態性高血圧』の患者さんで、降圧剤を中止した後でも、数年間にわたって血圧が正常化したとする報告が複数存在しています」

 もちろん、すべての患者が降圧剤を中止できるわけではない。

 2001年の学術誌「アメリカン・ジャーナル・オブ・ハイパーテンション」によると、多くの国際データを解析した結果として、「高血圧の患者の42%は、降圧剤を中止しても、その後少なくとも1年間は正常の血圧が持続したと報告」している。

 ということは、半分以上の患者は、血圧の薬を中止することで急激に血圧が上がったり、結局はまた血圧が悪化するような問題が生じているのだ。

 それでは、どのような人なら安全に降圧剤を中止できるのだろうか?

「これまでの多くの研究報告と、私自身の経験的なデータを基にした薬のやめ方があります。まずは本態性高血圧の患者さんで、薬をやめられる人の条件です。通常2年以上の治療を行っている人で、3カ月間1種類の薬の最小用量を飲み続け、上の血圧が130mmHg未満を維持していれば、薬を中止できる可能性が高くなります」

 薬の効きにくい高血圧の場合はどうか。

「降圧剤にかえて利尿剤を使用しても良いのですが、代謝への影響が大きいので中止前の薬としては適していません。また、左室肥大などの心臓の異常があれば、中止は慎重に考えます。実際に中止するには、1カ月ごとに2カ月間、その後は2カ月ごとの診察を1年間は継続します」

 その間、体重の管理と減塩の指示は継続し、1年が経過しても血圧の上昇がなければ、それ以降は1年に1回の診察に移行するという。

「この方法はひとつの案ですが、本当は医学会がまとめ上げ、ガイドラインでこうした段取りが決められるべきだと思います。念を押すようですが人によっては降圧剤はやめられます。ただし、その場合でも専門家と連携して、慎重にやめることが必要なのです」